【深掘り】「このままだと壊滅的に…」 沖縄修学旅行キャンセル3割超 GoTo停止で加速


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ニライカナイに届く修学旅行のキャンセル通知 =18日、恩納村山田のニライカナイ

 平和学習や文化体験で安定した人気を保っていた県内への修学旅行だが、予約のキャンセルに歯止めが掛からない状況に追い込まれている。政府が年末年始に「Go To トラベル」を停止すると発表して以降、学校側の不安心理からキャンセルに拍車がかかっている。2020年度上半期(4~9月)は、緊急事態宣言が発出されるなど新型コロナウイルスの影響で県内では一校も実施されなかった。下半期の見通しも厳しい状況が続いている。

■売り上げは4%

 「残念ながら修学旅行の中止が決定してしまいました」。修学旅行向けの体験プログラムを提供するニライカナイ(恩納村)の事務所には連日、キャンセルを伝えるファクスが届く。GoTo停止が発表された14日から23日までの10日間で、25校・3781人のキャンセルが出た。

 同社は毎年約9万人の修学旅行生を受け入れ、民家での沖縄そば作りや三線教室など文化体験プログラムを提供している。例年10~12月の修学旅行シーズンは年間の7割を稼ぐ繁忙期だが、20年度は12月中旬の時点で例年の4%程度の売り上げにとどまっている。

 高齢者への感染リスクを考慮して民家での体験を中止するなど、感染防止対策ができるプログラムのみ実施しているため、受け入れられる数は10分の1に減っている。
 加蘭明宏代表は「今の受け入れ数ならば、利益よりもコストの方が上回る。正直、気持ちだけで受け入れている。このままだと沖縄の修学旅行業界は壊滅的になる」と強い危機感を抱く。

■対策発信強化を

 沖縄を修学旅行で訪れる生徒数は05年度から19年度まで、15年間連続で40万人を超えていた。沖縄戦の戦跡を巡る平和学習や独自の文化体験など、他地域にはない魅力をセールスポイントとしていた。

 修学旅行は一般の旅行と比べて、保護者の意見が実施に大きく影響する。ニライカナイに届く文書には「保護者アンケートで反対意見が過半数を超えてしまいました」などの文面もある。ガマの見学やタクシー、飛行機での移動について「感染リスクが高い」と判断する保護者が多いという。

 各観光施設で感染対策を実施しているものの、学校や保護者の不安を取り除くには至っていないのが現状だ。今後は行政や沖縄観光コンベンションビューローを中心に情報発信を強化して、対策の内容を「見える化」していくことも必要となる。

 加蘭代表は「ただの感染対策ではなく、保護者が安心できるぐらいの対策をしないといけない。受け入れ事業者側の対策をもっと強化する必要がある」と、受け入れ側全体で取り組む必要性を強調した。

(中村優希)