<一括交付金1千億円割れの衝撃・下>沖縄県、廃止論も念頭「既存の考え方では駄目だ」


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 国の2021年度沖縄関係予算3010億円のうち、一括交付金は制度創設以来、初めて1千億円台を割った。玉城デニー知事は「額の増減に一喜一憂する必要はない。(1千億円台を割ったが)その分、地方や市町村に直接国が支給する交付金の額が増えている」と述べ、悲観論を打ち消した。しかし近年の沖縄関係予算の推移を踏まえて自民関係者や県幹部の間では、22年度からの新たな沖縄振興計画で一括交付金の存続を危ぶむ声がささやかれている。(梅田正覚)

 一括交付金は12年度から始まった現振計で導入された。使途の自由度が高いため県内自治体に重宝されており、全市町村が制度の継続を求めている。だが予算額は14年度の1759億円をピークとして、これ以降は減額傾向が続く。国は同制度の補完として19年度から県を通さずに国が市町村などに直接交付する交付金「沖縄振興特定事業推進費」を創設した。

 国は一括交付金制度創設当初は執行率が低いことを挙げ、県に対応を促してきた。県が全市町村を挙げて対応してきた結果、近年の執行率は改善されて指摘はなくなった。だが減額は続き、県財政課は「なぜ減っているかは分析できていない」と話す。

 県と政府が米軍普天間飛行場の移設問題を巡って対立していることが最大の要因とされる。自民関係者は「近年は県を通さないで市町村に直接補助する国直轄事業の金額が増加している。その動きを見ると、おのずと見えてくるのではないか」と指摘し、一括交付金の行く末を暗示した。県幹部も一括交付金の廃止を念頭に置いている。

 この懸念は市町村へも広がっている。本島中部自治体の首長は11月に県庁の玉城知事を訪ね、次期振計での一括交付金制度の継続を求めた。その上で「継続が難しいならば、代替制度の創設を国に求めることをお願いしたい」とも付け加えた。

 県関係者は一括交付金「廃止論」について「『いつまでも制度が残るという甘い考え方ではいけないよ』という警鐘の意味で、そういった話が持ち上がっているのではないか。全市町村が制度継続を要望している。なくなることはないのではないか」と語る。

 政府は22年度からの次期振計の策定は明示していない。ただ菅義偉首相は10月、県内で開かれた島尻安伊子元沖縄担当相の政治資金パーティーに映像出演し、振計の延長について初めて言及し「沖縄の皆さんが安心して生活できるような方向に作っていきたい」と述べた。

 21年度予算が閣議決定された21日の河野太郎沖縄担当相の会見。記者から現政権下で初めてとなる予算編成への感想を問われた河野氏は「今回は概算要求まで安倍(晋三)政権で進めてきた」と述べ、こう続けた。「次の予算が全面的に『菅カラー』を打ち出すものになる」。

 離島自治体首長の一人は、近年は一括交付金を活用して新事業を始めようにも国の審査に通りにくくなっていると明かす。「沖振法の延長に向けて沖縄側も既存の考え方では駄目だ。今の政治家と官僚は27年間の異民族支配や地上戦、70%の基地集中といった話をしても分からない。国からではなく、県から振興策を提案していくことが必要だ。ふんどしをしっかり締めないと、国の壁は厚い」と危機感を表した。