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菅内閣「負のスパイラル」コロナと疑惑が追い打ち<佐藤優のウチナー評論>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 菅義偉内閣が負のスパイラルに入っている。12日に毎日新聞が発表した内閣支持率は40%だった。朝日新聞の世論調査では内閣支持率がこれを下回った。

 〈朝日新聞社は19、20日に全国世論調査(電話)を実施した。菅内閣の支持率は39%(前回11月は56%)に急落した。不支持率は35%(同20%)に増えた〉(20日「朝日新聞デジタル」)。

 内閣支持率の急落は、複合的要因によって生じている。もっとも大きい要因がコロナ対策への国民の不満だ。ニコニコ動画に出演した菅氏が「ガースーです」と自己紹介したこと、国民には5人以上の会食の自粛を呼びかけていながら自身が高級ステーキ店で8人の会食をしたことが問題になった。

 こういった態度を菅氏が改めれば内閣支持率が回復するということにはならない。なぜなら、国民が菅内閣のコロナ対策に強い不満を持っていることが原因で、「ガースー」や高級ステーキ店での飲食への不満は、結果に過ぎないからだ。

 菅内閣が成立した当初は、菅氏が酒を飲まず、パンケーキが好きだということが好意的に報道された。パンケーキの前でほほ笑んでいる菅氏の写真が、叩き上げの庶民的政治家として受け止められた。現時点でこのような写真は掲載されたならば、「コロナ禍で国民が苦しんでいるのにヘラヘラ笑いながら菓子なんか食っている不埒(ふらち)な奴だ」という評価になると思う。

 今後、菅内閣の支持率が一層低下すると思う。「桜を見る会」前夜祭の費用の一部を安倍晋三前首相の事務所が負担した問題を巡って、東京地方検察庁特別捜査部は、24日、事務所代表で安倍氏の公設第1秘書を政治資金規正法違反(不記載)の罪で東京簡裁に略式起訴した。また、秘書らと共に刑事告発された安倍氏は不起訴(嫌疑不十分)にした。この処分を決定する前に特捜部は、安倍氏から事情聴取を行った。安倍氏の不起訴を不服とする市民団体が、検察審査会に申し立てを行うであろう。1年近く続く検察審査会の審理の間、安倍氏の政治活動は制約されるであろう。

 25日、安倍氏は衆参両院の議院運営委員会で釈明したが、野党は納得せず、安倍氏が国会で虚偽答弁をしたと追及を強めている。今後、野党と一部のマスメディアは国会の証人喚問に安倍氏を招致することを強く要求するようになるであろう。

 また吉川貴盛氏が農水相時代に計500万円の現金を鶏卵生産・販売大手「アキタフーズ」(広島県福山市)の前代表から受け取った疑惑も今後、深刻になる。この疑惑についても、現在、東京地検特捜部が捜査を進めている。吉川氏は、22日、体調不良を理由に衆議院議員辞職願を大島理森衆院議長宛てに提出し、議長が許可した。これから吉川氏は心臓手術を受けるようだ。

 しかし、検察は議員辞職に関して違法性認識があるからこのような決断を吉川氏がしたと受け止め、政治資金規正法違反(虚偽記載)のみでなく収賄罪での立件に向けて捜査を進めるだろう。検察は農水官僚から事情聴取を進めている。

 この経緯についても、これから検察がリークして世論の追い風を吹かせようとするであろう。その結果、菅内閣に対する国民の支持はますます低下することになる。メディアの菅バッシングが始まると、近未来に政権が危機的状況に陥る可能性がある。

(作家・元外務省主任分析官)