【深掘り】なぜ?泡瀬の鳥獣保護区指定凍結 「開発規制」と地元懸念 ラムサール登録要件で暗礁


社会
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 沖縄市と北中城村にまたがる泡瀬干潟のラムサール条約登録に向け、同干潟周辺を鳥獣保護区に指定する県の計画が、地元からの賛同を得られず、暗礁に乗り上げている。同干潟では沖縄市が東部海浜開発事業を進めており、地元は将来的な規制強化を懸念する。保護区指定には地元の同意が必要で、計画の進展は見通せない状況だ。

 県は来年11月に開催されるラムサール条約の締約国会議を前に、前提条件となる鳥獣保護区の指定に向けて計画案を作成した。一方、地元では、干潟の埋め立てが進む中で、指定が開発に与える影響を懸念する声が根強い。市の関係者は「なぜ今なのか。事業完了後では駄目なのか」と県に疑問を呈する。

繁殖や子育てのために泡瀬干潟に飛来するコアジサシ=2019年7月

 23日には県が地元向けの説明会を開催。「実際よりも規制がかかるとの誤解がある」として、保護区指定による開発行為の制限は少ないと強調した。埋め立てが進む人工島や橋りょうなどを指定区域から除外する「折衷案」も提示したが、理解は得られなかった。松田了環境部長は「地元の賛同が前提だ」として、計画を凍結する考えを示した。

 説明会を受け、保護区指定に反対を明言している桑江朝千夫市長は「市民の考えを聞く姿勢は評価したい」とする一方で、中城湾港新港地区を含む東海岸の活性化に向けた構想もある中で、保護区指定が開発への「足かせ」になるとの懸念を示し「沖縄の将来のため、県も一体となって取り組んでほしい」と求めた。

 自然保護団体は、環境省がラムサール条約の基準を満たす国内湿地の一つとして泡瀬干潟を選定したことや、貴重な渡り鳥の飛来地である点から、早期の登録を望む。泡瀬干潟を守る連絡会の前川盛治事務局長は「理解が得られず残念だが、少なくとも市側が同意できる場所の指定は可能だと思う。県には地元の意見も踏まえて計画を再考し、丁寧な協議を続けてほしい」と期待する。

 県の関係者は「過去には埋め立て中止を求める住民訴訟もあり、市民間で相互不信もあるようだ。埋め立てを推進する関係者らには、ラムサール条約登録を根拠に、新たな訴訟を起こされるのではないかという疑念もあるのではないか」と進まない状況に頭を抱えた。

 (下地美夏子、島袋良太)