空手発祥地・沖縄の誇り 喜友名諒 200年の極意を背負い、見つめる先に五輪の頂


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 空手の源流の一つ、那覇手の流れをくむ劉衛流。宗家二代・仲井間憲里(のりさと)の誕生から200年あまり。教えを受け継ぐ喜友名諒は先達が形に込めた意味を問い続けている。「劉衛流は仲井間先生がつないできた空手。自分は全然足りていないが、技の意味合いをもっと研究して、自分の体で表現したい」。常に沖縄空手の誇りを胸に世界で戦ってきた。

 劉衛流では間合いを「一足二拳」、攻守一体の動きを指す「攻防一如」など独特の極意がある。四代・仲井間憲孝(けんこう)に「技は湧き出る泉のごとし」という言葉がある。畳みかけるように突いて、蹴る。一つ一つの基本動作も奥が深い。

 突き一つとっても探求が続く。喜友名は2017年のシリーズA(オーストリア)で「全身を乗せて突く」という新たな感覚をつかんだ。「どこを意識すればより速く、強く突くことができるか。日々の稽古でさまざまな気づきがある」

 師匠の佐久本嗣男氏はあくまで沖縄の独自性にこだわる。稽古では粘るような動きを意味する「ムチミ」、無駄な動きを戒めて「わーばぐとぅ(余計な動き)」といった言葉が飛ぶ。武器を用いない「無手の法」と呼ばれる空手だけでなく、棒術や釵術(さいじゅつ)など古武術の「兵器の法」も指導する。

 生死を懸けた実戦から生まれた空手を喜友名は毎日必死で再現する。「いつも稽古でやっている形を出せば結果がついてくる」。数々の偉業はそのような鍛錬の日々と伝統ある技を受け継ぐ矜恃の念から生まれてきた。

文・古川峻

写真・喜瀨守昭

 きゆな・りょう 1990年7月12日生まれ。
沖縄市出身。世界選手権3連覇、空手1プレミアリーグ最多の19回優勝を果たしており、この二つがギネス世界記録に認定された。
昨年12月に全日本選手権で史上最多となる9連覇を達成した。興南高―沖縄国際大出。劉衛流龍鳳会所属。