日常の健康診断や診療、薬の処方箋などの情報として蓄積された、「リアルワールドデータ(RWD)」を幅広い分野に活用しようと、健康、医療データ基盤運営のブルーブックス(那覇市、志茂英之社長)らがこのほど、沖縄RWDコンソーシアム(共同事業体)を設立した。病気の予防や医療システム効率化、新産業の育成などを目指す。
コンソーシアムの運営事務局は、ブルーブックスの他に、経営コンサルティング企業のボストンコンサルティンググループ、NTT西日本が担う。アドバイザリー委員に武田薬品や大学の医学部なども参加している。設立は11月6日付。
ブルーブックスは、那覇市医師会や県内各地の自治体、病院と連携し、健康診断で55万人、診療で109万人分のデータを保持している。個人の許可を得た場合に限り、データを医学研究や製薬プロセスに活用している。
コンソーシアムは、データの活用により(1)病気の早期発見や服薬管理など患者の利益向上(2)より効果の高い治療手段の選択など、医療システムの効率化(3)効果の高い薬品や食品のような製品開発など、新産業の育成―を目的としている。
志茂代表は「例えば過去20年分のデータを分析し、特定の病気を発症した人の記録をさかのぼって共通項を洗い出すことで、早期発見や予防につなげることができる」と説明する。
公的データベースや先行企業と比較してデータ量は多くないものの、特定個人へのアプローチが可能で、大半のデータが日々自動更新される。創薬などの分野で、従来よりも安価に利用可能なことなど、実用性が評価されている。
志茂代表は「厳正な個人情報の管理と、データ活用の本人同意を丁寧にしてきた結果として、国などのプロジェクトを通じて研究機関や企業などが沖縄のデータを利用し始めている。沖縄の研究環境がさらに周知されれば、新たな医学系産業の集積と同時に、県民が快適に過ごせるサービスの開発も可能だ」と話した。