旅客便活用 貨物拡大へ 県、国際物流ハブ新戦略 電子商取引へ対応強化


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
地上係員らによって旅客機へ次々と積み込まれる貨物=9月10日、那覇空港貨物ターミナル

 那覇空港を拠点とした国際物流ハブ事業の強化に向け、格安航空会社(LCC)などの国際旅客便を活用して貨物輸送のネットワークを形成する新たな物流戦略を、県が策定していることが分かった。現在運航している貨物専用機に加え、海外の航空会社との連携を強化し、旅客便での貨物輸送を増加させる。旅客と貨物の同時輸送で、貨物路線の新規開拓や小口でも採算が見合う体制を整備し、コロナ禍でも伸びているEC(電子商取引)や越境EC市場への対応を増やす。1月末にも県が今後の方向性を発表する。 

 県は貨物コンテナを借り上げ、生産・輸出業者らに提供する「航空コンテナスペース確保事業」を実施して、那覇空港を経由する貨物の増加を図ってきた。しかし、新型コロナウイルスの影響により、輸送を担ってきたANAカーゴの国際貨物便が今年4月から全路線運休している。そのため、羽田や成田など、本土空港を経由して国際貨物を運ぶ代替輸送を余儀なくされていた。

 その結果、県の「航空コンテナスペース確保事業」で取り扱った貨物量は、4~9月の重量ベースで前年同期比44.3%減の約384トンにとどまっている。県外からの特産品輸出が前年の半数割れとなったほか、輸送時間が長くなるため、青果物など日持ちがしない食品の輸出が落ちてきている。

 県の新たな方向性は、コロナ禍の前まで週200便程度就航していた国際旅客便に着目。航空会社と提携し、旅客機の貨物部分に県内外の品物を載せて輸送する考え。これまで貨物専用機がソウル、台北、香港、上海、シンガポール、バンコク、クアラルンプールなど7都市との間で輸送していたが、新たに海外航空会社と連携することによって、輸送できる都市の拡大を目指す。

 県によると貨物専用機の1機当たり積載量が約50トンなのに対し、旅客機は約12トン程度になる見通し。小口の貨物輸送への対応が可能だとしている。

 国際貨物ハブ事業は、航空会社間の競合などの問題があり、近年は貨物量の伸びが停滞していた。嘉数登県商工労働部長は「事業自体を再考する時期だ」との考えを示し、「アジアに近いことをメリットとして生かしつつ、(輸送の)時間だけではなく、ネットワークを広げることで今後発展していく可能性がある」との考えを示した。

(池田哲平)