辺野古「スピードアップを」 振興計画は効果重視を強調 河野沖縄相


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インタビューに答える河野太郎沖縄担当相

 河野太郎沖縄担当相は1日までに琉球新報などのインタビューに応じた。2021年度末で期限を迎える沖縄振興計画の次の計画については「まだ白紙。本当に効果があったものに集中する」と述べ、これまでの実績を精査した上で判断していく考えを示した。沖縄科学技術大学院大学(OIST)が世界的にも評価が高まっていることにも触れ「OISTの活用について積極的な提案をむしろ沖縄側からやってくれていい」と沖縄側からの発案も促した。防衛相時代に見直したイージス・アショアと同様に辺野古移設計画の見直しの考えがあるかとの質問には「早期返還は沖縄の振興には非常に役立つ。スピードアップがコスト削減にもつながる」と加速の必要性を強調した。(安里洋輔)

 Q:2021年度末で期限を迎える第5次沖縄振興計画の評価はどうか。
 A:「沖縄振興特別措置法の延長の是非、今後の計画ともに白紙の段階だ。これまでの結果を見て、以前から言っているように、やはり『エビデンス(根拠)』で本当に効果があったものに集中していく。効果があるものの予算を増やし、そうではないものは削ってそちらへ回すということをやっていかないといけないと思っている。成果目標が曖昧なものもあるが、少なくともそういう方向で議論したいと思って今準備をさせている。何のためにやった事業なのか。方向性がはっきりしないと評価しにくい部分もある。点検作業を進める中で、ロジックツリー(論理的分析法)みたいなものもしっかり見なければいけない」

 Q:21年度の沖縄関係予算は一括交付金が減り、国直轄の予算が増えている。
 A:「概算要求までの道筋は前任の大臣が作ってくれた。ああだこうだというのは正直言えない。安倍前首相が3千億と言っていたから、それはしっかり確保したいと思っていた。必要なものはクリアしていると思う。これから先どうするかは、中身、必要性、優先順位というものをきちんと積み上げていき、しっかり議論していきたい」

 Q:県は基地問題などで政府と対立する場面もある。予算編成との関連をどう考えるか。
 A:「関係ない。私としては、やはり経済振興をしっかりやっていくことを考えている。以前から言っているように基地をひっくるめて、どう経済を発展させるかということを考えていかないといけない。県がやるもの、それから市町村がやるもの、それ以上にやはり沖縄の企業、産業界が頑張ってやってもらわないといけない」

 Q:次期振興計画の焦点は基地の跡地利用だ。
 A:「(米軍)牧港補給地区(キャンプ・キンザー)が返還予定だ。あれだけの土地だから、やはり最大限有効活用をして、21世紀の沖縄を引っ張るような構想をぜひ出してもらいたい。地元との検討会が進んでいる。内閣府からも参考にしてもらえるような案を出した。それを参考にしながら、それにとらわれることなく、地元といろいろ議論をして良いものを出してもらいたい。スーパーシティ(AIやビッグデータを活用した新都市設計)という構想もある。やれることは思い切ってやってほしい。浦添市長にも沖縄のみならず、ゆくゆくは21世紀の日本の最先端、あるいは世界が注目するようなことをやってほしい」

 Q:OISTとの連携も視野に入れているのか。
 A:「いろいろなことが考えられる。可能性は最大限広げて、やってもらいたい。OISTは世界的にも評価されてきている。OISTを核にして世界中から研究者を沖縄に集めてくることだってできる。海外の大学、大学院を沖縄に誘致していくことだってあり得る。使えるものは何でも使ってほしい」

 Q:OISTは学術機関で経済波及効果が薄いとの指摘もある。
 A:「世界で評価されるOISTの所在地が沖縄という時点で、沖縄の価値にプラスになっている。そういう研究施設が身近にあることを沖縄の学生が感じてくれたり、あるいはそこで生み出される研究成果を、沖縄の企業が利用したりすることも十分にあり得る。OISTの活用について積極的な提案をむしろ沖縄側からやってくれていいんじゃないかと思う」

 Q:米軍基地の英語教育への活用について発言あった。
 A:「使えるものは何でも使うというのが鉄則だ。国際化が課題になる中で、アジアに近い沖縄の地理的な優位性を使おうと思えば、やはり英語が非常に大きな切り札になる。今後のデジタル化IT化を見越しても、英語でどれだけ受発信できるかが非常に大事だ。パソコンや自転車に乗るのと同じレベルで英語を使うようになる。もはや特殊技能ではなくなる。パソコンに詳しい人がいたら当然その人に聞く。自転車に乗れる人がいたら乗り方を教えてもらう。同様に英語ができる人から英語を習うというのはガンガンやるべきだ」

 Q:沖縄県民には米軍基地へのアレルギーもある。
 A:「英語を習うことと基地問題には相関関係はない。要するに子どものために、若者のために、何が一番大事かという視点で考えなければいけない」

 Q:沖縄の経済振興を目指す上で重視すべき点は何か。
 A:「個々の企業がいかに頑張るか。社会主義国ではないのだから。民間企業がいかに汗と知恵を使うかだ。われわれは、その努力がきちんと成果に結び付きやすいようなサポートを一生懸命やらないといけない。民間の努力なしに沖縄の経済発展はありえない」

 Q:自治体主導ではなく民間で、ということか。
 A:「自治体が何かを生み出すわけじゃない。企業がどれだけ発展するかという部分にかかってくる。それは後押しできる。企業が何かやろうとすることの障害を除くのは、規制改革でわれわれがやらなければいけないことだ。国や自治体が旗を振っても経済は発展しない。企業がどれだけ努力し、投資し、技術開発に力を入れるかということだ」

 Q:県内企業の努力は足りているか。
 A:「少なくとも1人当たり県民所得の順番をまず一つ上げるために一緒に頑張りたい。現状に甘んじてほしくない」

 Q:見直すべき振興策は。
 A:「今、いろいろレビュー(再調査)してるところだ。現時点での評価は避けたいが、予算にも限りがある。やはり効果のあるもの、優先順位の高いものから、きちんとやっていくというのは大事だ」

 Q:県民所得が全国最下位となっているが、同時に県内での格差の問題もある。
 A:「1人当たり県民所得の問題は以前から知っていたが、(所得の不平等さを示す)ジニ係数が全国トップクラスというのは驚きだった。特に子供の貧困率が高い。母子世帯が多い点にも起因する。自治体やNPOと一緒に見ていかないといけない。一番避けるべきなのは貧困の連鎖だ。食い止めるためには教育機会の均等が必要だ。離島では小中学校まで島内の学校に通い、高校から島外に出ることもある。ただ、15歳になって『武者修行に行くぞ』というのはそう悪いことではない。そういう子供たちにも、経済支援をきっちりやっていく」

 「さらに財政的な問題で、教育を受ける機会を逸する子どもが出ないようにするというのは非常に大事だ。オンライン教育を活用すれば、地域間の教育格差の解消だけでなく、子どもが個々の得意分野を伸ばすこともできる」

 「今の教育の流れはティーチングからコーチングに移りつつある。できる子はオンライン教育も活用してどんどん伸ばし、寄り添わないといけない子どもに寄り添う。そうして全体の底上げをしていくという教育をできるように、国も自治体も一緒に支えていくべきだ。いずれ沖縄を引っ張っていくようないい人材を輩出する流れを作らなければいけない。子どもへの投資を充実させる必要がある」

 Q:貧困問題の解決先の一つとして教育を重視することがあるのか。
 A:「大事だ。特に子どもの貧困の割合が高いという部分は、早めに手を打っていかないといけない」

 Q:子どもの貧困は親の所得の低さにも起因する。
 A:「その中でもやはり母子世帯が貧困に陥る割合は高い。そういうところからしっかり見ていく必要がある。県民所得の水準を上げなければいけないのはもちろんだが、親の所得にかかわらず教育のチャンスを逃がさないようにサポートする奨学金制度などの仕組みを整えることが大事だ」

 Q:防衛大臣在任時はコスト、安全面から「イージス・アショア」を見直した。同様に辺野古新基地を見直せないか。
 A:「普天間飛行場をとにかく早く移設をするのが安全面からも急務だ。経済振興の観点からも、早期返還は沖縄の振興には非常に役立つ。スピードアップがコスト削減にもつながる」

 Q:見直しよりスピードアップを図ることが解決策か。
 A:「そうだ」

 Q:離島の教育格差解消については。
 A:「高校をつくる、あるいはオンラインで高校の授業ができるというやり方ももちろんある。高校をつくるのはなかなか難しいかもしれないが、島に残って高校のカリキュラムをオンラインでやるという選択肢はあると思う」

 「島の中だけで生活をしていた子どもが、本島あるいは鹿児島、東京に出てくる、あるいは本島の人と交わるというのはそれはやはり成長段階で重要なことだ。それをサポートする政策というのも大事なのではないか」

 Q:大臣就任当初、基地と経済振興の「ひっくるめ論」が話題になった。
 A:「既に基地があるわけだから、それを抜きには考えられない。そこにあれだけの米国人がいるわけで、リソースとして使えるものは使えばいい。全体をひっくるめて、どうするのかという考えをしていかないといけない」