夢は「チャンピオン牛を育てる」3代続く闘牛一家で牛専門ドクター、新年の決意「一歩ずつ」


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 【読谷】「毎日が勉強だよ」。優しそうな笑顔でそう語るのは、牛飼いとして牛の世話をしながら、牛専門のドクターとしても牛を支える比嘉悟さん(52)=読谷村楚辺出身=だ。祖父、憲永さんの代から続く闘牛一家で育ち、「当たり前のように」牛と共に歩んできた。久しく闘牛大会には参加していないというが「いずれは、一から育てた闘牛を出したいという思いはある。でも、まずは牛のように一歩ずつ踏みしめながら大切な1年を送りたい」と新年の決意を述べた。

牛専門ドクターで牛主でもある比嘉悟さんと「東昇ブロディ」と名付ける予定の闘牛=12月24日、読谷村楚辺

 「牛を助けたい」―。中学生の時に、世話する牛が腹痛で苦しんでいたものの、夜中だったこともあり、医者がなかなかつかまらなかったことが、獣医師を目指すきっかけとなった。進学先には北海道江別市の酪農学園大学を選び、6年間“牛漬け”の毎日を送った。卒業と同時に獣医師試験に合格し、その後、沖縄に戻って農業共済組合に加盟する。

 2011年に独立開業するまでの18年間、県内各地に配属され「牛だけでなく、豚もヤギも、たまに学校の鶏も診たよ」と懐かしそうにふり返る。現在は自身の牛舎の繁殖牛130頭の世話をしながら、診察をする。「今は99%、牛だね」

 「好きなことをやっているから大変と感じることはあまりない」と語り、特に出産時に子牛が無事に生まれた時は何よりもうれしいという。一方で子牛は体調管理も難しく、気が抜けない状態も続く。牛舎では繁殖牛とは別に10頭の闘牛も育てているが、「今はなかなか闘牛に手が回らないが、いずれはまた大会にも出したい」と強調する。

 6年間不敗を守り続けた伝説の名牛「ゆかり号」の連勝記録を41で止めて闘牛史に名を残す「鮫島号」をはじめとし「東昇神龍」、「東昇皇龍」と横綱を輩出し、沖縄闘牛会をけん引してきた祖父の憲永さん、父親の憲雄さんの姿を見てきた比嘉さん。現在は読谷闘牛組合の組合長も務める。夢は「メイドイン比嘉の牛でチャンピオンを育てること」。牛たちを愛おしそうに見詰めながら語った。

 (新垣若菜)