すい臓がんと闘う先生が「いのちの授業」で伝えた思い 「つらいことも人生のスパイス」


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自身のがん闘病経験を生徒の前で話す沖縄尚学の上野浩司教諭=2020年12月18日、那覇市国場の同校

 沖縄尚学高校・付属中学の上野浩司教諭(61)はこのほど、中学3年生に向けて自身のがん闘病体験を語る「いのちの授業」を開いた。上野教諭は2018年7月に膵臓(すいぞう)がんが発覚。最も重いステージ4だったが、手術や抗がん剤治療を経て職場復帰した。授業中に闘病経験を語ることはあったが、闘病を主題に語るのは今回が初めて。

 上野教諭は部活の国際大会に出発する直前に、黄疸が出ていることに気付いた。医師から即入院を勧められたが、入院すれば生徒も大会に出場できなくなると考え、大会がある米国へ出発。帰国後、検査でがんと判明した。

 抗がん剤治療でつらかったことには「味覚障害」を挙げた。「ごはんを口に入れても感触はあるが味はしない。まるで砂を食べているようだった」と話した。一番つらかったのは「学校に行けないこと」と話した。

 がん教育は2021年度から本格適用される中学校の新学習指導要領に盛り込まれた。上野教諭は事前にがん教育に関する研修を受けて講話に臨んだ。がんはさまざまな種類があり、症状も多様であること、がんになる要因はウイルスや生活習慣、遺伝などがあるが、あくまでリスクであり、原因が分からないがんもあることなど、がんに関する知識も伝えた。

 まだ再発の可能性もあるが「今は怖くはない」と話し「再発した時は自分の中のがんに『ガンコ君』と名前を付けようと思っている。一緒に生きていけばいいと思う」と語った。

 集まった生徒に向けて「皆さんの年頃はつらくて死にたいと思うことがあるかもしれない。でも、つらいことは人生のスパイスだと思ってほしい。おいしいケーキでも毎日食べたらおいしくなくなる。酸っぱい物、苦い物もあってそれぞれがおいしくなる」とメッセージを送り、「人は必ず死ぬ。私は命を全うするまで一生懸命生きたい」と語った。