緊急事態と国民不安 10万円金券配布を提案<佐藤優のウチナー評論>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 仕事始めの4日、県庁で玉城デニー知事が行ったあいさつは、現下沖縄が抱える問題を端的に示している。

 〈(玉城知事は)子どもの貧困対策を「県政の最重要政策」と位置付け、「新型コロナウイルスの影響により重要性が一層増している。子どもが健やかに成長できる社会を実現するとともに、1人当たり県民所得の向上や正規雇用の拡大など雇用の質改善に引き続き取り組んでいく」と抱負を語った。/玉城知事は昨年を「例年にない大きな困難に県民と共に一丸となって立ち向かった年だった」と振り返った。特に新型コロナについては「感染症の影響により沖縄の社会経済、県民生活は極めて厳しい状況が続いている」と述べ、「厳しい状況下でも社会のセーフティーネットの維持が図られるよう全力で取り組んでいるところだ」と力を込めた〉(5日、本紙電子版)。

 新型コロナウイルス第三波が深刻になり、7日、中央政府は緊急事態宣言を発表し、東京、埼玉、千葉、神奈川を対象地域とした。宣言に伴ってとられる行動規制、営業規制の強化が経済活動にかなりの打撃を与える。1都3県は日本の中では比較的経済力の強い地域だ。この地域における経済の停滞が、全国に影響を与えることになろう。日本国民が生活の先行きに深刻な不安を覚えている。

 また、社会的弱者へのしわ寄せが強まり、経済要因による餓死が実際に生じている。また、自殺者も増加傾向にある。

 〈新型コロナウイルス禍の影響が懸念される自殺者数について、厚生労働省は10日、11月は1798人(速報値、前年同月比11・3%増)だったと発表した。年間の自殺者数は過去10年減少を続けているが、今年は前年同月比で7月以降5カ月連続の増加となった。/同省は「重く受け止めている」としており、コロナ禍の影響が出ている可能性があるとみて原因分析を進める〉(20年12月11日「日本経済新聞」電子版)。特に女性の自殺者が増えているのが去年後半からの特徴だ。このような状況を食い止めるために有効な手を打つ必要がある。

 菅首相のイニシアチブで国民一人一人を元気づけるメッセージとなる政策が必要だ。具体的には、再度、1人10万円の一律給付を行うことを提案する。ただし、今回は現金ではなく、有効期限(例えば発行から半年)をつけた金券を配付することにする。これならば、配付した金券は市中で消化されるので、確実な経済効果が望める。この金券で税金、公共料金などの支払いも可能にする。

 この政策を実現するためには12兆円くらいの予算が必要とされる。財源は国債に頼らざるを得ない。財政再建論者は「ばらまき政策はやめろ」と反対するであろうが、今は非常時だ。国民の不安を解消する大胆な政策が必要と思う。

(作家・元外務省主任分析官)