牛の健康を担う専門職「削蹄師」を目指す新成人の挑戦 「牛の爪を支えたい」 


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県内最年少の削蹄師を目指す長山敏輝さん =7日、うるま市

 11日の成人の日を前に県内の多くの自治体で10日、成人式が開かれる。2000年4月2日~01年4月1日生まれが新成人として新たな門出を迎える。牛削蹄師を目指し、日々修行を重ねる長山敏輝さん(19)=名護市=もその一人。昨年9月から県牛削蹄師会の久高唯志会長の家に住み込み、牛の「第二の心臓」と言われるひづめに関する技術を学んでいる。引きずられながらも、蹴られながらも、「一日でも早く北部の牛の爪を支えられるようになりたい」と、牛歩ならぬ“猛(モウ)進”で飛躍を誓う。

 久高さんの長男で削蹄師でもある直也さんに1年前に声を掛けられ、削蹄師に興味を持った。元々牛飼いの家に育ち、「仕事にするまでは考えていなかったが、できるようになったらかっこいいなと思っていた」。北部地域では、牛の数に対して削蹄が行き届いていない現状も背中を押した。

 牛のひづめは血液循環を促すポンプの役割があり、伸びすぎや変形でポンプ作用が低下すると、さまざまな病気やトラブルが発生する。久高さんによると、県内では約250人が削蹄師資格を持っているが、実働は30人にも満たないという。

 長山さんは、削蹄の技術を学ぶため、昨年4月からうるま市の久高さんの家に通い、9月からは住み込みで本格的に習い始めた。与えられた最初の課題は「体重を増やすこと」。「ヒョロヒョロ体形で、牛に引っ張られていたからね」と久高さん。久高家の協力の下、12キロも増やした。「朝から信じられない量のご飯を食べさせられました」と笑う。

 以前は、「綱引き状態」だったという牛の扱いも、体力が付き、少しずつ動かせるようになった。現在は久高さんや直也さん、兄弟子の作業を見ながら腕を磨いている。「早く仕事を覚えて一人前になり、爪切り待ちのやんばるの牛たちの爪を切って回りたい」と意気込む。昨年11月に2級認定牛削蹄師の試験を受験し、1月末に結果が分かる。合格すれば、県内で最年少の削蹄師となる。

 「仕事を信頼して任せられるような腕になったら、教える側としてもうれしい。たくさん頑張れよ」。久高さんが声を掛けると、長山さんは恥ずかしそうにうなずいた。10日の成人式には、「師匠」と呼ぶ直也さんに買ってもらった黒のスーツで参加する。(新垣若菜)