【寄稿】コロナ禍で沖縄の地価動向どうなる? 不動産鑑定士の試算「下落1桁台にとどまる」


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昨年7月1日に発表された路線価で県内の最高価格だった那覇市久茂地3丁目付近。コロナ禍の影響で今後の地価動向が注目されている=2020年6月29日、那覇市

 相続税や贈与税算定の基準となる路線価などの2021年県内地価が、1月1日現在の適正時価を基に算定される。近年の沖縄の地価上昇は全国的にも高水準の伸びが続き、昨年まで県内路線価は対前年変動率で3年連続で全国トップとなってきた。だが、新型コロナウイルスの影響による経済活動の停滞を受け、土地の収益性などが低下しているとの指摘がある。不動産鑑定士の松永力也氏が本紙に、コロナ下における県内地価動向の見通しについて論考を寄せた。

国の経済支援策が機能

 適正時価といわれる地価公示価格や路線価は2020年1月1日時点で、過去最高値を更新して公表された。その結果、20年度のさまざまな公的指標は、この過去最高値で算定され続けている。裁判や融資額、不動産関係税額の決定など、公的な不動産時価は、この公的地価指標を根拠に算定されており、コロナ禍の中で、過去最高価格で算定することで「何らかの不測の損害を県民に与えてしまわないか」と憂慮してきた。

松永力也氏

 20年7月1日時点で中間的な地価調査価格が発表されたが、コロナ禍の影響が指標として十分に、確実な形で現れているとは言いにくい状況だった。

 そのため、21年1月1日時点の公的地価指標が発表されると、コロナ禍が地価動向に与えた影響がどのようなものだったのかが明らかになる。

 適正価格は原則「取引、収益、取得原価」の三面から求めることになる。コロナ禍で地価変動を素早く把握するには、取引からの価格、事業収益からの価格が重要な要素となる。

 「収益価格」は感染症の影響によって、事業収益が大幅に減少しており、下落している。一方、不動産市場で成立する取引値から求める「取引価格」は、大きな下落値を示していない。持続化給付金や融資制度など、政府がさまざまな形態で国民に経済支援をしてきたことが機能したとみられる。

 「収益価格は下落」「取引価格は、横ばいで何とか現状維持」という状況下で21年1月1日の適正価格を結論付けると、那覇市の中心部で10%より小さい、1桁台の下落にとどまると個人的に試算している。今のところ、大きな下落にはなっていないので、一安心している。

 しかし、21年の春から秋にかけて、感染症がさらに拡大し、医療崩壊や、ワクチンに効果が認められない場合には再度、適正価格の下落が始まる可能性もある。感染症の動向に注視が必要となる。

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 まつなが・りきや 1962年生まれ。那覇市久米出身。不動産鑑定士。那覇高、日本大法学部法律学科卒業。琉球大大学院法学修士修了。2013~17年、県不動産鑑定士協会会長を務めた。