ビニールひもがない時代、ムーチーは何で結んでいた?そんな疑問から生まれた「月桃ひも」


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月桃の茎で作ったひもを結んだムーチーを前に、月桃の茎を裂いてみせる知花優子さん=12日、宜野湾市

 健康祈願でもちを食べる伝統行事「ムーチー(鬼餅)」がある今月20日(旧暦12月8日)を前に、ハルサー(農家)の知花優子さん(56)=宜野湾市=がもちを包んだ葉を束ねる資材として、月桃の茎で作った「ひも」を使うことを提案している。脱プラスチックなどの環境問題を考えることにもつながる。知花さんは「少し手間はかかるけど、安心でエコ。食の安全を考えるきっかけにしてほしい」と、優しい気持ちを添えた。

 ムーチーの「ひも」について疑問を抱いたのは25年ほど前。月桃の葉に包まれたもちを結ぶひもは当たり前のようにビニール製。だが、それがない時代はどうしていたのか気になった。

 「何で、月桃さ」。地元のおばあたちに話を聞くと、一様にこの言葉が返ってきた。葉を落とした月桃の茎を1枚ずつ外し、手で裂いたものをひもとして使い、ムーチーを結んだ。最初は破れることもあったが、乾燥させて使う前に5分ほど水に浸せば曲げやすくなるなど、試行錯誤してうまくできた。昔ながらの方法で作った、月桃の茎のひもに代えただけだが、ムーチーにはいつも以上にぬくもりが漂った。

 知花さんは2015年から浦添で農業を始め、無農薬でハママーチなどのハーブ栽培や養蜂に取り組み、「ナカタゲーベジガ」の屋号で販売する。畑では月桃も育てている。お茶にしたり、かごなどの道具にしたりするなど、自身を「月桃フリーク」と呼ぶほどほど熱中する。最近はフェイスブックで情報発信し、その中で月桃の茎をムーチーのひもに使うことを勧めた。

 月桃のひもについて、知花さんは料理などにも使えるとして「地産地消、自然のものを使った持続可能な農業にもつながる」と期待した。 (仲村良太)