タイムカード「直帰時に同僚打刻」で解雇…女性が会社提訴検討 沖縄労働局「処分重すぎ」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
会社を解雇された際の状況などを説明する女性=本島中部

 沖縄県浦添市内の会社に勤める40代の女性が昨年12月、タイムカードの取り扱い方法が就業規則に違反したとして、同社を懲戒解雇となった。女性は法で定める就業規則の掲示などを受けてなかったといい「一方的に会社を追われた」と訴える。会社側は「(女性に対する)処分に問題はない」との見解を示す。女性は処分の撤回と未払い賃金などの支払いを求め、民事提訴を検討している。

 労働基準法では、就業規則は各作業所の見えやすい場所への掲示、備え付け、書面の交付等により労働者に周知しなければならないと定めている。女性は解雇される前に就業規則の一部を遠目に見せられたが、約5年間の在籍中は一度も開示を受けなかったという。

 女性によると、管理職だった女性が出先から直帰する日などに、同僚が便宜を図りタイムカードを打刻したことが問題視された。就業規則違反として昨年11月末、女性は会社から降格処分を告げられた。処分を受け入れなかった女性は自宅待機を命じられ、10日後に懲戒解雇になった。

 女性は固定給で、打刻によって残業手当の発生はなく、社内でタイムカードは形式的な扱いだったと主張する。

 同社の社長は琉球新報の取材に「(タイムカードの打刻で)女性は会社を欺いた。会社としては降格処分にとどめたが、納得しないようだったので退職を促した。不当解雇とは考えていない」と説明する。就業規則については周知が不十分なところもあったとし、今後は周知に努めるとした。

 沖縄労働局は、女性のタイムカードの取り扱いに悪意がなく、会社に大きな損失がないことなどを考慮すれば、解雇処分は過重だと指摘した。「処分は人事権の乱用に当たる可能性もある。法律の見解を加え、双方で協議してほしい」と求めた。タイムカードなどの勤怠管理については、過労防止や手当精算などの観点から、適正な運用を呼び掛けた。

 沖縄労働局によると、2019年度に県内の労働相談コーナーに寄せられた個別労働紛争相談は、19年度が2357件で前年度の2493件から高止まりの常態。「離職」に関する相談は922件で、このうち「解雇」に関する相談は400件に上る。