沖縄の障がい者は何を主張してきたのか 各団体が戦後の歩みを共有 南島文化市民講座


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 第42回南島文化市民講座「戦後75年 沖縄の障害者は何を主張してきたか」(沖縄国際大学南島文化研究所主催)が9日、オンラインで開催された。県精神保健福祉会連合会会長の山田圭吾さん、県自立生活センター・イルカスタッフの早坂佳之さん、県聴覚障害者協会前会長の比嘉豪さんの3人が各団体のこれまでの活動や今後の課題を報告した。

沖縄国際大学南島文化研究所の岩田直子副所長の進行の下、意見を交わす登壇者ら=9日(同研究所提供)

 山田さんは、精神障がいがある当事者が「家族や親族との関わりが少なく、まだ社会に受け入れられていない状況がある」と指摘した。精神障がい者らを小屋などに閉じ込め隔離する「私宅監置」がテーマのドキュメンタリー映画「夜明け前のうた」が、4月に県内で上映されることに触れ「映画を通じ私宅監置の歴史や現状を伝えていきたい」と話した。

 早坂さんはイルカが設立されるまでの流れや、沖縄の障がい児教育、在宅サービスの歴史を説明した。日本復帰を契機に、沖縄の障がい者福祉は本土の施設収容モデルをより取り入れたとし、「各地域の行政機関に相談に訪れた障がい児の親には施設入所が勧められ、コミュニティーから障がい者の姿は消えていった」と指摘した。

 比嘉さんは、任意団体だった県聴覚障害者協会が法人格を取得するまでの経緯などを解説した。現在の手話通訳者派遣事業について「手話通訳者を24時間派遣できる体制と人数が足りない。手話講習会で養成しているが、養成所設置のほか通訳者を育てる講師の養成も急務だ」と課題を挙げた。

 後半は、参加者から多くの質問が寄せられた。精神科病院に長期入院する患者の地域移行に必要な取り組みに関して、山田さんは「薬に頼るだけでなく地域の人との関わりが当事者への大きな支えになる。時間はかかっても支援者を増やす取り組みを続けたい」と語った。

 手話通訳者の現状について、比嘉さんは「手話通訳者は通訳士という資格があるが公務員としては認められていない。今後、公的に国家資格として認められれば、派遣体制を整えることにもつながると思う」と述べた。早坂さんは「障がい者運動は地域の人たちとつながり共に活動することだ。昨年は人と会えないコロナ禍で活動をどう継続できるか悩んだ1年だったが、各団体と今後も交流や連携を図りたい」と語った。