那覇空港の陥没、防砂シート劣化が原因 地盤の海砂が流失 技術検討委特定


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
那覇空港(資料写真)

 那覇空港の第1滑走路と第2滑走路を結ぶ連結誘導道路の緑地帯で、陥没や空洞が発生したことを受け、沖縄総合事務局は15日、技術検討委員会の初会合で、防砂シートが劣化し、破損箇所から埋め立てに使用した海砂などが護岸内に流れ込み、陥没と空洞が生じたと原因を特定した。シートの劣化原因は不明で、次回以降、対策を検討する。空港運用への影響はないという。

 防砂シートの耐久性試験では、試験前を100%とすると、試験開始3カ月後の引っ張り強度は30%以下、伸び率は10%以下まで低下した。電子顕微鏡では糸のひび入りや切断、糸が細くなることが確認された。調査は防砂シートの販売元が、水槽に現場と同じ石材や海砂、未使用の防砂シートを入れて屋外で行った。

 本紙が防砂シートの販売元や製造元に確認したところ、これまでに取り扱った防砂シートで陥没や空洞の事例はないという。

 強度低下や破れが確認された防砂シートは、第2滑走路増設事業(全6工区)のうち、5工区のみで使用され、他工区で陥没や空洞は生じていない。

 技術検討委員会は埋め立てに岩ズリを使用している誘導路では、防砂シートの劣化部分から急速に海砂が流れ出すことはないとしている。

 また、緑地帯では陥没の発生が続くと想定されるが、大きな陥没が発生する可能性はないという。


「空港運用に影響の可能性も」鎌尾彰司・日大准教授

 技術検討委員会は空港運用への影響はないと説明しているが、影響が出る可能性は否定できない。

 誘導路の下は埋め立て材に岩ズリを使用しているが、誘導路の間に位置する緑地は海砂を使用している。海砂が1年以上前から流失しているため岩ズリへの影響もあることが考えられるためだ。岩ズリの位置がずれると、航空機の重さを支えることができず、誘導路に沈下が発生する可能性もある。

 防砂シートの引っ張り強度や伸び率の試験結果では、特記仕様書で求める規格値を使用後1カ月で満たさないものもある。3カ月後には全て規格値を下回る。

 シートを使用した工区で、予定されていない力が加わったとは考えにくい。普通に使って劣化したのであれば、材料不良が要因ではないか。

 対策としては、劣化しない防砂シートを敷き直すことになると思うが、工事のやり直しになるため供用しながらの施工が可能かどうかが問題となる。いずれにせよ再発防止のためにも、シートが劣化した原因を究明することが必要だ。

 (地盤工学)