「終わりないマラソン」 緊張続く命の現場 病床逼迫する県立北部病院


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陽性患者がいる病棟内で防護服をまとい、作業にあたる看護師ら=13日、名護市の県立北部病院

 【北部】「患者が入ります」。13日午後2時前、沖縄県立北部病院内の新型コロナウイルス専用病棟に、感染者が到着するとの知らせが入った。緊急で受け入れ準備が始まり、現場に緊張感が漂った。同病院では連日、5人程度の新型コロナ患者が入退院している。「終わりのないマラソンを走っているみたいだ」。現場で対応に当たる同病院の永田恵蔵医師は、ため息をついた。

 北部病院の新型コロナチームは医師4人、看護師26人、集中治療室のスタッフ19人の計49人で構成する。感染リスクを抑えるために、病棟内はエリアごとに色分けされる。マスクで立ち入りが可能な「緑ゾーン」や、陽性患者がいて防護服の着用が必要な「赤ゾーン」などがある。

 新型コロナ以外の一般病棟では、患者7人に対して看護師1人が配置される。新型コロナ患者の場合、昼間は患者2人に対して看護師1人、夜間は患者4人に対して看護師1人で対応する。北部では、さまざまなケアが求められる高齢者患者の割合が高いという。久高いづみ看護師(41)は「高齢者は体調の悪化が見た目で分かりづらい。一瞬も目を離せない」と現場の緊張感を伝える。

新型コロナの診察のために防護服をまとい、ゴム手袋を着用する永田恵蔵医師=13日、名護市の県立北部病院(写真は一部加工しています)

 新型コロナの患者に対応する場合、エプロン型の防護服、2重のゴム手袋、医療マスクの上からフェースシールドを着ける。朝昼晩の3回、患者の健康状態を確認し、食事の準備、入浴や排せつの補助まで業務は多岐に渡る。患者の状況によって、2時間近く赤ゾーンにいることもあるという。

 感染リスクと隣り合わせの医療現場では、ほとんどの看護師が大きな不安を抱えながら過ごしている。看護師を支えるのは、休憩室の一角にあるボードに張られた感謝の手紙だ。「大変な病気を治してくれてありがとう」「自分は必要な存在なのかと悩んだ時に『気にしないで』と言ってくれてありがとう」。退院した人々から看護師への感謝の言葉がつづられた。

 重篤な患者に使う人工心肺装置「ECMO(エクモ)」は2台保有しているが、使用したことはない。「稼働するには人手が足りない。必要な患者が出てきたら、中部に搬送するしかない」と玉里桂子看護師長(49)。事態の収束が見えない命の現場で、医療従事者たちの闘いは続いている。 (喜屋武研伍)