written by 照屋大哲(南部報道部)
「行けるか」。2020年9月、上司からの電話で急きょ、南大東島への出張が決まった。当初、特別警報級で最大瞬間風速80メートルと予報されていた台風10号の取材だった。停電に備えカップラーメンや菓子パンをかばんに詰め込み、那覇から約1時間のフライト。人生で初めて南大東島の土を踏んだ。
台風対策から直撃、通過後までの4泊5日間、島中を駆け回った。不謹慎だが、記者が台風取材で求められるのは、被害が一目でわかるインパクトのある写真だ。そんなよこしまな目的で島を右往左往する私に、住民は温かく対応してくれた。自分が求めているものと、目の前の人の温かさとの温度差に寒気がした。
台風通過後、枝葉が散乱する庭の片付けをしていた60代女性に声を掛けた。「電気ガス水道、全部止まっている。どうしよう」。女性は立ち尽くし、戸惑いの表情を見せた。それでもすぐに、「皆さんも大変ですよね。頑張ってください」とこちらを気遣った。苦しい中での他者への思いやりに胸を打たれた。
あれから4カ月。時折、あの5日間を思い出す。南大東島の皆さん、元気でいますか。
(豊見城市、八重瀬町、粟国村、南大東村、北大東村担当)
ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。