【深掘り】3度目の緊急事態宣言までに3日連続の協議が必要だった理由


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新型コロナウイルスの感染抑止のため3度目となる県独自の緊急事態宣言を出す玉城デニー知事=19日、県庁(代表撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかけるため、玉城デニー知事は3度目となる県独自の緊急事態宣言を出した。17日から3日連続の対策本部会議で協議を重ねたのは、宣言の効果が確実に表れるよう経済界の要望に配慮して「意見の一致」を目指しつつ、財源確保に向け、国の基準に準じた行動制限について議論を重ねたからだった。 (座波幸代)

 国の緊急事態宣言の対象地域、またはそれに準ずる地域に指定されれば、1日6万円の協力金などが見込める。一方、対象地域は新型インフル特措法に基づき不要不急の往来の自粛が求められるため、観光業界からは宣言発出に対する反発は強く、財源確保との板挟みとなった。政府に追加指定されるかも未知数だ。

 効果に期待

 「非常に大きなハンマーになるだろうと思う」

 玉城知事は会見で、飲食店などへの午後8時までの時短要請について語った。

 14日の知事会見で、同席した中部病院感染症内科の高山義浩医師が「沖縄は大きな流行への入り口にある。ちゅうちょなく強力なハンマーを打つべき状況ではないか」と指摘していた。玉城知事は要請が感染拡大を抑え、医療崩壊を食い止める「効果」があると期待を示す一方、対象を全市町村に広げ、店舗ごとに協力金を支給して飲食業界を支援することを強調した。

 3度目となる今回の緊急事態宣言発出は、昨年から新型コロナによる売り上げ減で苦しむ事業者にさらに追い打ちを掛けることになる。

 外出自粛などによる県経済への影響を最小限に抑え、回復を支援していくためにも、玉城知事は、西村康稔経済再生担当相に追加指定を早急に働き掛けていく考えを示した。

 選挙への影響

 一方、緊急事態宣言の発出や往来自粛の要請に対する観光業界の強い反発は変わらない。

 この日、県ホテル協会の平良朝敬会長らは県議会の赤嶺昇議長らを訪ね、県が「来県自粛」などの発信を控え、国の緊急事態宣言発令地域との「往来自粛」を撤回するよう求めた。

 プロ野球やサッカーの春季キャンプ開催を目前にした宣言に、平良会長は「緊急事態宣言というものが、いかにインパクトのあるメッセージになるか」と、ホテル業界への影響に強い懸念を示した。玉城知事や県に対して要請しなかった理由については「聞く耳を持たないから。言っても無駄だ」と切り捨てた。

 県幹部は「来年の知事選を見据え、知事も経済界の反発は避けたいはずだから丁寧に説明してきた」と、宣言発出までの経緯を語るが、リーディング産業の観光を支えるホテル業界とのしこりは残ったままだ。