「新基地阻止」玉城知事の働き掛け焦点 米政権発足前に書簡送付


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 米バイデン新政権は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を進める方針を堅持する見込みだ。新型コロナウイルスのまん延で訪米の見通しが立たない中、新基地建設阻止を掲げる玉城デニー知事がどう米国に働き掛けを続けるかが焦点だ。政権発足に先立つ13日、県は玉城知事名で、バイデン大統領とハリス副大統領に宛て書簡を送った。政権内での政策が固まる前に、沖縄の実情を伝えて課題の一つとして認識させる戦略だ。

 オバマ政権で東アジア・太平洋担当の国務次官補を務め、辺野古新基地建設計画の取りまとめに携わったキャンベル氏が、アジア担当の高官ポストに就く。政府関係者の一人は、辺野古移設を進める姿勢は米民主、共和両党の政権とも引き継いできた経緯があり、「辺野古移設を進める方針は変わらない」と話した。

 バイデン氏は国際協調を重視する考えを示している。制裁関税を乱発して貿易摩擦を招いたトランプ前大統領の姿勢から一線を置き、米中両国が競争しながら共存を模索する可能性もある。ただ、両国の覇権争いが激しくなる中長期的な流れは変わらない見通しだ。

 中国軍が太平洋進出に向け行動を活発化させるのに対抗し、米軍は部隊を分散配置して沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」内に中国を封じ込める新戦略構想を試行している。在沖米軍基地を改めて強化する動きもあり、県は基地負担の増加に警戒を強める。

 バイデン氏らに宛てた玉城知事の書簡はワシントン事務所を通じ、電子メールで政権移行チームに送った。沖縄が抱える過重な基地負担や被害状況を説明し、「日米同盟の安定的な運用の観点から、沖縄の基地負担の軽減にも配慮してほしい」と述べている。

 辺野古新基地建設については、投票総数の7割が反対に投じた県民投票の結果や軟弱地盤の存在に触れ、建設計画の再評価を検討するよう求めた。

 県幹部は「報道を見ると(トランプ前政権と)同じような事を言っているようだが、沖縄の実情を伝える大事なタイミングだ」と語った。書簡を送った狙いについて「まだ固まる前の早い段階で、沖縄の声をしっかり届けたかった」と強調した。

(明真南斗・知念征尚)