「普天間熟知」のキャンベル氏起用、沖縄の米軍分散も示唆 どうなる米新政権アジア政策


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カート・キャンベル氏

 第46代米大統領に就任したジョー・バイデン氏は、安全保障や外交を担う幹部にオバマ政権時代のスタッフを多く起用している。国家安全保障会議(NSC)に「インド太平洋調整官」のポストを新設し、米軍普天間飛行場の移設問題に精通するカート・キャンベル元国務次官補を起用するなど、「アジア政策重視」の姿勢を打ち出した。

 同盟強化を掲げる新政権は、辺野古移設についても引き続き日本政府と歩調を合わせることが予想される。ただ、キャンベル氏は少数の基地に依存することが脆弱性につながるとし、兵力の分散にも関心がある。新政権のアジア戦略や辺野古移設を含む在沖米軍基地の問題にどう取り組むのかを探った。
 バイデン政権は前政権と同様に、中国に対する強硬姿勢は維持するものとみられる。国務長官候補のアントニー・ブリンケン元国務副長官は19日の上院委員会の公聴会で、「トランプ大統領が対中強硬姿勢を採ったことは正しかった」と強調した。
 国防長官候補のロイド・オースティン元中央軍司令官も「中国は既に地域の覇権国で、目標は支配的な世界の大国になることだ」と強い警戒心を示した。その上で、同盟関係を再構築する考えを示している。
 知日派のキャンベル氏は1996年、日米両政府が普天間返還で合意した際の国防副次官補を務め、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)見直しなども担った。2009年から13年にはオバマ政権の国務次官補として対日・対中政策を担当。アジア太平洋へのリバランス(再均衡)政策を立案した。
 キャンベル氏は12日、外交誌へ寄稿し、中国の軍事力を抑止し米国の優位性を保つには、空母よりも長距離の巡航・弾道ミサイルなどの開発に投資するよう提起した。
 東南アジアやインド洋に米軍を分散する必要性も指摘。「東アジアにある少数の脆弱(ぜいじゃく)な施設への依存を減らすことになる」とし、沖縄の基地負担軽減の可能性を示唆している。
 米シンクタンクの研究者も中国のミサイル能力向上を念頭に、嘉手納基地など沖縄の米軍基地の脆弱性が高まっていることや、基地が集中することの危険性を指摘する。
 新政権下では、在日米軍の兵力構成の見直しに向けた日米間協議を始めるとの米有識者の見方もある。それに伴い在沖海兵隊の駐留見直しの可能性も出てきそうだ。   (問山栄恵)