病床数「世界一」なのになぜ不足? コロナ対応の「壁」とは 高山医師に聞く


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 新型コロナウイルス対策に関わる法改正に合わせて民間病院でのさらなるコロナ病床確保の議論が高まっている。日本は人口比の病床数が世界一多いにもかかわらず、医療崩壊が目前に迫り、民間病院でのコロナ病床設置を進めるべきだとの声がある。一方、県内では基幹的役割を担う公立病院に加え、新型コロナに対応できる急性期(患者の容体急変に対応)の民間病院は既にほとんどが受け入れに協力している。コロナ病床を大幅に増やすことは難しく、感染者数を抑えることが重要とされている。

 県によると新型コロナ診療を担っている県内の病院数は合計22。うち公立・公的病院が11、民間病院が11。病床数で見ると、県が確保を計画するコロナ病床数の59%が公立・公的病院。残り41%が民間病院となっている。

 県の専門家会議委員を務める中部病院感染症内科の高山義浩医師は「病床数世界一」の背景について「日本では、高齢者の療養やリハビリも病院で行ってきた歴史がある。病院に求める役割が異なる欧米と病床数の単純比較はできない」と説明する。その上で「新型コロナの診療は急性期病院で行うべきだが、沖縄では既にほとんどの急性期病院がコロナ対応に参加している」と現状を説明し、病床の伸びしろは少ないとの認識を示す。高山氏は、役割が違う回復期病院や慢性期病院で、無理にコロナ診療を行えば、院内感染のリスクも招きかねないと説明した。

 高山医師は病床逼迫(ひっぱく)への対応としては(1)基礎疾患のある人が生活指導を守って脳梗塞や心不全などの合併症を予防する(2)急性期病院の非コロナ患者を早期に回復期病院や高齢者施設に転院させる―ことが現実的だとした。その上で「病床もマンパワーも有限な資源だ。病床を増やそうにも急速な感染拡大には追い付かない。一番有効なのはこれ以上、感染を広げないことだ」と強調した。

 入院者数の増加を受けて県は16日、これまで最大356床だった新型コロナ用の病床を1週間程度で469床まで増やす計画を公表した。県によると、この病床数の確保は、既にコロナ診療に対応している県内22病院の協力を得て進める方針で、新たな病院は含まれていない。