五輪の延期は自分にとってプラス メダル圏内は目前 重量挙げ男子73キロ級・宮本昌典<憧憬の舞台へ>


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全日本選手権男子73キロ級 スナッチ日本新記録の155キロを挙げる宮本昌典=2020年12月11日、新潟県のニュー・グリーンピア津南体育館

 東京五輪のメダル獲得が現実味を増してきた。昨年12月の全日本選手権でトータル345キロの日本新を記録した重量挙げ男子73キロ級の宮本昌典(23)=沖縄工高―東京国際大出、同大職。「五輪でメダルを取るための最低限の数字」と位置付ける350キロは目前だ。「まだ強化が足りない」と伸びしろを見詰め、目標達成を射程圏内に捉えている。

 コロナ禍で大会のなかった昨夏、取材に対し「五輪の延期は自分にとってかなりプラスだ」と語っていた。ここ数年は五輪の代表選考レースで大会が続き、じっくり自分と向き合う時間はほぼなかったという。突如訪れた空白の期間でスクワットやレッグプレスのマシンを使い、「馬力がない」と弱点に挙げていた下半身を徹底的に鍛えた。

 真価は年末の全日本選手権で如実に表れる。スナッチで自身が持つ日本記録を4キロ更新する155キロに成功。ジャークの2本目では保持する日本記録の190キロを挙げた。最終試技の195キロはクリーンで立ち上がれず「満足していない」と悔しさをにじませたが、「次につながる」と進化を実感した様子だった。

 ジャーク195キロについて「立ち上がれば差せる自信はあった」という言葉が示す通り、目標に届かなかった要因にはやはり下半身を挙げる。「まだまだパワー不足。筋力トレーニングでもっと力を付けたい」と貪欲に成長を求める。

 ただ筋力の増強とフォーム維持の両立は容易ではない。天性の柔軟性を生かし、最短距離でバーベルを挙げる滑らかなフォームは宮本の強さを支える生命線だ。「筋力が付けば関節の可動域や動きの感覚はかなり変わる。体重も管理しながら、フォームが崩れないようにどう落とし込んでいくかが重要」と繊細な感覚と向き合いながら、日々模索を続ける。

 73キロ級は今、リオ五輪69キロ級で金を獲得した石智勇(中国)がトータル363キロの世界記録を持ち、ずばぬけた存在だ。2位以下は340キロ台でだんご状態にあり、宮本は「350キロはメダル獲得のための最低限の数字。1位を食らうくらいの気持ちでやったらおのずと結果は付いてくる」とやる気をたぎらせる。

 次戦は春のアジア選手権。「(350キロ成功の)自信はある。もっと強くなった自分を見せられるように頑張りたい」。急成長を遂げる若手のホープから目が離せない。

(長嶺真輝)