<寄稿>景気回復「23年以降」企業に見通し強まる 消費縮小社会に備えを(コザ信金・前屋誠専務理事)


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 新型コロナウイルスの感染拡大は1年が経過しても収束せず、経済活動の停滞が続いている。本島中部地区を中心に継続的に企業動向を観測しているコザ信用金庫の前屋誠専務理事に、感染症の影響が長期化していることによる影響分析を寄稿してもらう。


 

 新年早々、沖縄県でも3度目の「緊急事態宣言」が出されるなど、コロナの第3波が猛威を振るっています。このような中で、2021年の沖縄県の景気見通しについては、厳しい見方が多くなっています。

 コザ信用金庫が、中部地区を中心とする企業や事業主の方々に昨年暮れに実施したアンケート調査によれば、今年の景気見通しが「やや悪い」と「悪い」の回答割合は、合計で62%となっています。1年前、コロナ禍が始まる前の調査では、同じ回答割合が19%にとどまっていたのと比べると、コロナ禍でまさに景気見通しが一変したと言えます。

 また、今年の売り上げの見通しについては、減少を見込む先の割合が43%に上っており、同じく1年前の21%に比べて2倍に増えています。

 今年の景気が厳しいのみならず、来年も景気は上向かないとの見方も多くなっています。同じアンケート調査で、景気が上向く時期について尋ねたところ、「2023年以降」とみる先が42%と最も多くなりました。また、「見通しが立たない」との回答も9%に上りました。この調査の3カ月前の昨年9月に同様の趣旨の調査を行った際には、「2023年以降」および「見通しが立たない」の合計は35%であったことから、コロナ禍が長期化するにつれて、景気の先行きの不透明感が一層強まっています。

 今、世界中でワクチンの普及に期待が寄せられています。ただ、コロナの脅威がこれほどまでに強く人々の心に焼きつけられると、今後、ワクチンが普及しても、旅行や飲食などに対する警戒心はある程度残るものと思います。レジャーや飲食への支出は、なかなか以前のようには戻らない可能性もあります。

 これからの「ウィズコロナ」の時代は、新しい生活様式の下で人々の活動が一定の制約を受ける中、個人消費が縮小する社会になることも想定して、コロナ後の新しい社会を築いていく必要があると思います。

 今回の調査の中で、コロナ禍において企業や事業主の方々が地域金融機関に求めることとして、「資金繰り支援のみ」という回答は15%にとどまっており、多くは、各種補助金・助成金等の活用支援や、ビジネスマッチング・顧客紹介など、いわゆる「本業支援」を求めていることが分かりました。

 地域金融機関としては、コロナ禍でお困りの企業・事業主の方々や地域の皆さまを全力で支え、「伴走支援」することによって、コロナ禍を乗り越えて新しい社会を作ることに取り組んでいきます。


 まえや・まこと 1959年3月生まれ、東京都出身。早稲田大卒。82年に日本銀行入行。調査部門を長く経験。2015年にコザ信用金庫入庫。理事総合企画部長を経て、19年6月から専務理事。