辺野古に陸自離島部隊 負担軽減に逆行 沖縄県「機能強化を裏付け」


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辺野古沿岸部で訓練を行う米海兵隊の水陸両用車「AAV7」=2018年7月、名護市

 名護市辺野古の新基地建設も見据えてキャンプ・シュワブに陸上自衛隊の水陸機動団を常駐させることで米軍と陸自が合意していたことについて、沖縄県は25日以降、日本政府に詳細を問い合わせる方針だ。県幹部からは「新基地建設が基地機能強化につながることが裏付けられた」と指摘する声が上がった。

 玉城デニー知事は24日、本紙の取材に「詳細を確認してコメントしたい」と述べ、事実関係の確認を急ぐ考えを示した。

 米軍普天間飛行場の移設について、県は1996年の日米特別行動委員会(SACO)の最終報告の内容と現計画が異なると指摘してきた。日本政府は「代替施設」と呼ぶが、普天間飛行場にない新たな機能が付くことから県は「新基地」と呼んでいる。

 県幹部の一人は「(水陸機動団の常駐計画が)事実なら、新たな機能追加が裏付けられたことになる。ますますSACOの内容から遠ざかる」と述べた。また、防衛省全体の決定を経ずに合意されたとの情報に「あってはならないことだ。地元の負担がどうなるかを含め、日本政府にきちんと説明を求めたい」と語った。

加速する日米の「軍事一体化」

 日本政府や米軍幹部はこれまでも、米軍キャンプ・シュワブの自衛隊との共同使用や配備に言及してきた。

 在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官(当時)は2017年11月、米軍キャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセンなどの米軍基地に水陸機動団が配備される認識を示した。小野寺五典防衛相(当時)は「キャンプ・シュワブとは限らず、全体としての共同使用は必要だ」と同調する姿勢を示していた。

 05年に日米の外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が合意した米軍再編の中間報告は、自衛隊が使用できる県内の施設が限られているとして、在沖米軍施設の「自衛隊との共同使用」を盛り込んだ。15年4月に日米が合意した日米防衛協力指針(ガイドライン)も「施設・区域の共同使用を強化」とうたった。

 一方、民主党政権下の10年には防衛省が辺野古新基地に自衛隊の常駐を提案したが、米側が難色を示したこともあった。

 自衛隊が共同使用を目指す背景には、国内の既存演習場が「海に隣接した場所が限られる」(陸自関係者)状況で、水陸機動団が主眼とする離島防衛を見据えた上陸訓練がやりにくい事情がある。水陸機動団はこれまでも、国内のほか米本土やハワイなどでも海兵隊と演習を重ねてきた。昨年1月には金武町のブルービーチ訓練場で、水陸機動団と米海兵隊などが県内で初めて訓練を実施した。台頭する中国に対抗するとの名の下、沖縄を舞台にした日米の軍事一体化が加速している。

埋め立てや護岸工事が進められる新基地建設現場=2020年9月、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸(小型無人機で撮影)

新基地、軟弱地盤で完成めど立たず

 水陸機動団をキャンプ・シュワブに常駐させようとする陸上自衛隊は、日本政府が普天間飛行場の代替施設として工事を進めている、名護市辺野古の新基地との一体運用を狙っているとみられる。だが、埋め立て予定の大浦湾では軟弱地盤の存在が明らかになり、新基地完成のめどは立っていない。

 2014年に海底の掘削調査を始め、17年に護岸に着工した。18年からは辺野古側の海域に土砂を投入している。政府は水深の浅い辺野古側を埋め立てて、工事が進展していることを印象付けようとしている。ただ、県の試算によると、土砂投入量(20年8月現在)は全体の3・2%にとどまる。

 政府によると、工費は9300億円以上に膨らみ、工期は少なくとも12年に延びている。県は「時間がかかりすぎる」として計画の断念を求めている。

 政府は軟弱地盤を改良する工事を設計に追加し、県に申請している。新基地建設に反対する玉城デニー知事は応じない見通しだ。その場合、政府は法的措置も予定しており、新たな裁判での闘いに発展する公算が大きい。