トイレの管理と島人の誇り 大嶺雅俊(八重山支局)


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written by 大嶺雅俊(八重山支局)

 僕はおなかが弱い。だから、トイレがない場所に向かうのは少し気が重くなる。とはいえ、取材先は市街地だけではない。世界自然遺産候補地でもある西表島も守備範囲だ。自然の中に入る取材も時折あり、そんな時はやはり少し憂鬱(ゆううつ)になる。

使用済み携帯トイレの回収作業

 そんな西表島のフィールドに2019年、「トイレ」ができた。個人的に朗報だ。景勝地ピナイサーラの滝の3地点に設置された携帯トイレは、地元ガイド有志がついたて・便座付きスペースを管理する。使用済み携帯トイレの回収も担う。

 訪れた人が勝手気ままに用を足すことによる悪臭などの環境悪化を防ぎ、持続可能なフィールドにするのが目的だ。だが管理するガイドの負担は当然、重い。西表島で自然遺産について聞くと「登録されてもされなくても、どっちでも良い」と返されることが少なくない。その後には「自分たちが大事にしているのだから」と続く。自然と共生してきた島人の誇りをのぞかせる。

西表島・ピナイサーラの滝

 世界から評価を受ける自然に私たちが触れることができるのは、島の人が守り、伝えてきたから。雄大な光景の前で忘れがちになるが、一人の来島者として忘れずにいたい。

(石垣市、竹富町、与那国町担当)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。