新型コロナウイルスの水際対策を巡り、県が那覇空港や離島空港にサーモグラフィーを設置し、発熱者を感知する水際対策について、現時点で大きな成果が得られていない。県によると昨年4月の設置以降で、37.5度以上の発熱を検知したのは14人のみ。県が那覇空港に設置した旅行者専用相談センター沖縄(TACO)は、発熱者を確認した場合に受診やPCR検査につなぐ。だが県によると、依頼に応じて検査を受けた人はゼロ。医療機関の受診を予約しても、行かない事例もあるという。 (島袋良太)
新型コロナウイルスは発症後に感染力を持つと考えられていたが、発症2~3日前には感染力があることも明らかになった。そのため発熱者の捕捉のみでは不完全なことが分かっている。空港で発熱を感知しなかった県外からの渡航者が、県内で発症し感染を広げた事例もある。
こうした状況を踏まえ、県は那覇空港や離島空港にPCR検査ブースを設け、感染拡大地域からの来訪者がその場で検査を受けられる体制を整備する方針だ。
県観光振興課によると、空港のサーモグラフィーで捕捉した発熱者は昨年6~8月に12人。9月は0人、10月と11月が1人ずつの合計14人。その後捕捉した発熱者はゼロとなっている。高熱を感知した人には体温が高くなりやすい子どもが多く、無症状のためPCR検査につながらなかった事例もある。
県によると、新型コロナの感染拡大初期に比べてPCR検査の環境整備は進んだが、最近は検査につなぐ前提となる発熱者の感知自体がない。県は「症状がある場合に不要不急の外出を控えるなど呼び掛けも浸透したので、発熱者の行動抑制が働いていることも背景にあるだろう」と説明する。
一方、新型コロナは発症の数日前から感染力を持つことが明らかになり、サーモグラフィーの有効性も疑問視される。県の担当者は「そろそろ検査の手法を変えた方がいいということもある」と述べる。
空港にPCR検査のブースを設置する場合、検査費用は自己負担を軸に検討しており、検査するかどうかは任意。出発前にPCR検査を受けなかった渡航者が、県内で検査するか不透明な部分も残る。感染していても検査で陰性が出る場合もある。県は「検査結果にかかわらず、渡航後2週間は念のため行動抑制を求めたい」としている。