キャリアアップ「決めるのは自分」 女性人材育成「てぃるる塾」受講生が成果発表


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
自分らしく働き続けるためのキャリア形成について、学びの成果を発表する女性人材育成事業「第2期てぃるる塾」のメンバーたち=20日、那覇市の県男女共同参画センターてぃるる

 女性人材育成事業「てぃるる塾」(主催・県、おきなわ女性財団)の受講生による報告会が20日、那覇市の県男女共同参画センターてぃるるで開かれ、22人3グループが学びの成果を発表した。女性が自分らしく働き続けるキャリア形成の実現に向け、夫婦間で家事や育児の分担を話し合う必要性や、教育や企業、行政の支援の在り方について提言したほか、「女性の価値観や環境を変えたい。決めるのは自分。自分の意識が変われば願う方向に変わっていく」と呼び掛けた。

 諦めずに声上げて

 「キャリアアップと育児の両立」をテーマに発表した8人は、152人に独自のアンケートを実施し、出産に伴う働き方の変化などを考察した。具体的な変化として、男女とも「早退・欠勤が増えた」(男性60%、女性69%)が最多だったが、2番目に多い変化は男性が「時差出勤」(45%)に対し、女性は「雇用形態の変更」(42%)だったことを報告した

 妊娠や出産、子育てなどライフステージの変化に伴い、「女性がやりたい仕事からできる仕事へ切り替えるなど、キャリアアップを諦める女性が少なくない」と話した。SDGs(持続可能な開発目標)の目標「ジェンダー平等を実現しよう」の達成に向け、支援策の情報収集や発信の大切さを挙げ、「諦めるのではなく、声を上げてオンリーワンの人生を歩んでいきたい」と述べた。

 「家庭責任」は対等

 「私らしい幸せなキャリアアップ」と題して報告した7人は、賃金を得られる有償労働を「家計責任」、家事や育児などの無償労働を「家庭責任」と位置づけ、双方を夫婦間で対等に担う「5050プロジェクト」を提案した。県の調査で県内女性が家事などに費やす時間が1日3時間42分に上るのに対し、男性は45分と約5倍の差が生じていることを挙げ、「家庭責任」が女性に偏っていることが女性のキャリアを妨げる要因の一つだと訴えた

 夫婦が共に家庭の運営責任者であるという意識改革の必要性や、コミュニケーションを円滑にするためにカウンセリングの専門家や、課題を共有する「ミーティングシート」を活用することも提案した。

 持続可能な働き方

 「女性キャリア実現党~ワタシが変わる・そして沖縄を変える」をテーマに掲げた7人は、キャリアの定義を単なる昇進ではなく、「なりたい自分になるための人生の経験値・自己実現」と再定義した。SDGsになぞらえて、目指したいキャリア像を「SDCs(持続可能なキャリア開発=Sustainable Development Careers)」と新たな造語を生み出した。

 20~40代の女性20人へのインタビューを踏まえ、「『SDCs』の価値観を既に持っている女性は、キャリアを前向きに捉えている」と報告した。「てぃるる塾を通して、自分の考え方の癖やロジカルに話すと伝わりやすくなることなどを知り価値観や意識が変わった」と述べ、「これからもSDCsを広めていきたい」と決意を込めた。

 同塾は玉城デニー知事が塾長を務め、2019年度に始まった。2期目の20年度は9月以降7回、講座やグループワークを重ねた。コーディネーターを務めたコズミックコンサルティング代表の波上こずみさんは「互いに悩みを共有することで、多くの女性が抱える課題を『どうにかしなきゃ』と向き合う塾生の成長ぶりに感動した」と振り返った。