コロナ緊急宣言の再発令で修学旅行断念も 沖縄への20年度は3分の1に減の見通し 


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修学旅行生の姿が見当たらない京都・祇園=28日

 新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が11都府県に再発令され、1~3月に予定されていた学校の修学旅行の中止や延期が相次いでいる。昨年の夏や秋の予定を先延ばししていたものが断念に追い込まれたケースがあり、児童生徒の落胆は大きい。「大切な思い出づくりの機会を守りたい」と、実施を模索する学校もある。

 「生徒の安全を最優先した。断腸の思いだ」。1月18日から2泊3日の修学旅行を中止した愛知県立豊明高の根津利明教頭は悔しがる。広島市などに行く予定だったが、年明けに愛知県への緊急事態宣言発令が取り沙汰された時点で決断した。

 例年は1月に平和教育の一環で2年生が沖縄県を訪れていた。昨年9月の段階で感染リスクを考慮して目的地をなるべく近くにしようと、原爆ドームを見学できる広島市を回るルートに変更。随行の看護師を増やし、宿泊先の食堂を広く使って「密」を避けるなど感染防止策は万全のはずだった。生徒は中止決定を冷静に受け止めたようだったが、根津教頭は「何カ月も広島の歴史を学んできた。大きなショックをこらえているようだった」と思いやった。

 神奈川県茅ケ崎市では、市立中全13校が取りやめた。各校とも2回の延期を経て、3年生が2月中旬に京都市などを訪問する予定だったが、1月に入り茅ケ崎市教育委員会が中止を決めた。市教委は「高校受験を控えており、これ以上の延期は難しい」と説明。実施がはっきりしない状況が長引くと生徒も不安になると考え、早い段階で決断したとする。

 2年生が2月中旬に京都市の寺社を巡る計画だった新潟県長岡市立西中は、3年生に進級した4~6月に変更した。それでも感染が収まっていなければ9月以降にずらし、行き先も新潟県内に切り替える見込みだ。担当教諭は「子どもたちの成長につながる一大行事。なんとか実現させたい」と話す。

 毎年、全国の小中高校約2400校が修学旅行先に選ぶ沖縄県。「沖縄観光コンベンションビューロー」によると、2020年度は3分の1ほどに減る見通しで、年明けからは緊急事態宣言対象外の地域からのキャンセルも続出している。今の感染状況では積極的なPRも難しく、担当者は「事前に時間をかけて平和学習の準備をした生徒のために、周りの大人がサポートして実施できるといいのだが」と苦しい胸の内を明かした。

(共同通信)