歩みを止めない 岩切美穂(北部支社)


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written by 岩切美穂(北部支社報道部)

 夜に名護の街を歩くと、東にくっきりと「歩」の光文字が浮かんでいる。新成人による光文字は冬の風物詩だ。残念ながらこのコラムが載る頃には終了しているが、1月の街を彩った。ハンドルを握る車窓や犬の散歩の道すがら、静かなメッセージに思いをはせた。

神ケ森斜面に新成人が設置した光文字「歩」=10日夜、名護市

 「コロナ禍に前を向こう」との願いを人々はどう受け止めただろう。時短営業の取材に応じた居酒屋店主のため息や「収束まで帰国できない」と語ったベトナム人技能実習生。影響は年齢、業種、国籍を越える。

 「歩」の字にふと「どんな時も動き続けることが大事」という言葉を思い出した。以前取材した食堂の男性だ。妻が52歳の若さで病死後、店を守りながら娘2人を大学に通わせた。「今は2人とも管理栄養士」と語った顔が印象的だった。

 「元気ですか」と1年半ぶりに店を訪ねた。「何とかね」とマスクの下に変わらぬ笑顔。「団体客が減って厳しいが、良い事もある。ステイホームを機に三線を練習してるよ」と語る口調は明るい。「(妻を亡くして)あの頃はきつかった。でも大学を休まず、歩みを止めなかった娘たちが僕の誇り」。男性は胸を張った。

 歩みを止めないこと。再び胸に刻みたい。

 (名護市担当)