サンゴ訴訟、沖縄県訴え棄却 新基地建設 高裁、農相の指示「適法」


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 名護市辺野古の新基地建設に向けた大浦湾のサンゴ類移植を巡り、沖縄防衛局の特別採捕(移植)を許可するよう、農林水産相が県に是正を指示したのは違法として、県が指示取り消しを求めた訴訟で、福岡高裁那覇支部(大久保正道裁判長)は3日、請求を棄却した。県は上告する見通し。 

 新基地建設を巡る県と国の訴訟は9件目。判決後、玉城デニー知事は報道陣の取材に「地方公共団体の自主性や自立性を著しく制約する判決だ。納得できない」と述べた。

 県側は、判断するよう促すだけではなく、申請を許可するよう求める指示内容が違法だと主張していたが、判決は「県が許可しないのは違法状態だったので、許可するよう求める必要があった」などとし、農相の指示を適法と判断した。

 判決理由で大久保裁判長は、申請から45日間と定められている標準処理期間を超えても、県が移植申請の判断をしなかったと指摘した。「処分すべき相当の期間は経過しており、期間の経過を正当化する特段の事情も認められない」とし、県が判断しないのは違法だと認定した。

 埋め立て予定地では軟弱地盤が見つかり、沖縄防衛局が設計概要の変更申請を行っている。判決は、変更の承認が得られなかった場合は無益な工事になると認めつつも「県は工事が実施されるのを前提に申請の可否を判断すべき」とした。

 防衛局は2019年、県に計約4万群体のサンゴ類の移植許可を申請。県が判断を保留する中、昨年2月、防衛局の申請通りに移植を許可するよう、農相が県に是正を指示した。県は国の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出たものの退けられ、昨年7月に提訴した。