【深掘り】「家族養えなくなる」 県の緊急事態宣言延長 支援なし業界、悲鳴


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緊急事態宣言で人の出入りが少ない泊いゆまち。早めに営業を終える店舗も多い=4日、那覇市港町

 県独自の緊急事態宣言の延長に伴い、県は飲食店と遊興施設への営業時間短縮要請を継続し、1日当たり4万円の協力金も維持した。一方で、時短営業の影響を受けて売り上げが大きく落ち込む関連業種への支援はないままで、疲弊する県内経済関係者から落胆の声が漏れた。直接的な支援が見送られた食品卸業者やタクシー、観光事業者などから「家族を養えなくなる」と悲痛な声が上がっている。

 終わり見えず疲弊

 県飲食業生活衛生同業組合の鈴木洋一理事長によると、例年2月はプロ野球キャンプの関係者やゴルフで訪れる富裕層が多く、客単価の高い時期だが、時短要請によって組合に加盟する飲食店の約5割が休業を選択しているという。

 支援有無で「不和」も

 支援の有無による業種間の不公平感も表面化しつつある。

 休業している那覇市内の居酒屋店長は、取引先の業者から「飲食店だけ協力金をもらうのはおかしい」と言われたという。「ダメージを受けている企業全てが補償を受けるべきだ。国の判断のせいで、矛先が飲食店に向かってしまっている」と話した。

 飲食店の時短営業や休業によって農産物の消費量が極端に減り、業務用の食材は販売が低迷している。県内外の野菜や果実を卸売市場で取り扱う沖縄協同青果によると、居酒屋での需要が強い島ラッキョウは、県外への出荷がほとんど途絶え、1キロ当たりの単価は前年比51・6%減と大幅にダウンした。

 那覇市の泊いゆまちでは客足の減少で、週に数回しか営業しない店もある。

 ある仲卸業者は「飲食店が休業している。今までの緊急事態宣言で一番きつい」と声を落とす。県漁業協同組合連合会の亀谷幸夫専務理事は「飲食店に関係するところに、しっかりと手当てをしてほしい。仲卸業者も漁業者も、負のスパイラルになってしまう」と影響の拡大を懸念する。

 タクシーは観光客の減少と飲食店の時短営業という二重苦にあえいでいる。

 県個人タクシー事業協同組合の義永勉理事長は「飲食店が休業し、修学旅行もなくなって1日の水揚げ(売り上げ)が2千~3千円になってしまった人も多い。燃料代や車の維持費を考えれば、赤字になってしまう」と話す。

 支援の陳情で各市町村を回っているが、積極的な自治体とそうでない自治体で温度差が大きいという。「このままでは到底生活ができない。県や国は本気で支援を考えてほしい」と訴えた。

 観光、雇用の危機

 国も10都府県を対象とした緊急事態宣言を3月7日まで延長する。10都府県への往来自粛や観光支援策「Go To トラベル」の停止も続き、観光事業者は疲弊の色がにじむ。

 日本トランスオーシャン航空(JTA)の2月の運航数は、計画から54%の減便を実施する。JTB沖縄の2月の沖縄への送客数は、前年同月の2割にも届かないことが確実という。杉本健次社長は「非常に厳しい。県は宣言中に沖縄彩発見事業を実施し、解除後は速やかにGo To トラベル再開を働き掛けてほしい」と強く求めた。

 沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長は、10軒以上のホテルが休業しているとして、観光業への強力な支援が必要だと指摘する。「観光業への経営支援は十分ではない。このまま何もしないと、経営の継続や雇用が懸念される」と危機感を示した。
 (沖田有吾)