堅守にほころび見えた前半戦 シーズン後半の鍵を握るのは… 20~21キングスリポート


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 プロバスケットボールBリーグ1部の琉球ゴールデンキングスが前半戦を終えた。通算23勝9敗は西地区1位の三河と勝敗数で並び、直接対決の結果で2位となっている。好位置ではあるが、1月には4試合連続(天皇杯含む)で80点以上の失点を許し、リーグで3番目に少ない平均失点(74・3)を誇ってきた持ち味の堅守にほころびが見えた。選手と指揮官は「自分たちのバスケを見失っている時期があった」と危機感を共有し、後半戦に向けチームの“原点”を見つめ直している。

(長嶺真輝)

守備ファースト

キングス―滋賀 ボールを持った相手に体を張ってプレッシャーをかけるキングスの牧隼利(左)=1月27日、沖縄市体育館(新里圭蔵撮影)

 昨年10月に開幕した今季は序盤に圧巻の11連勝を記録するなど、けが人が多い中でも好調な滑り出しだった。中盤に向かう12~1月の成績は11勝7敗。A東京や川崎、千葉など、強豪がそろう東地区で白星先行を続けるトップチームからも勝利を挙げ、西の強豪としての地位を盤石にした。

 ただ1月はボールを持った相手との距離を詰めることや、パスコースをつぶす「ディナイ」など守りの基本が散漫になる場面も。キングスのチーム文化とも言えるハードワークの低下は、攻守の連係に乱れを生んだ。今季2番目に多い87失点で敗れた1月24日の京都戦後、田代直希主将は「規律が緩んでいる。自分たちのバスケをもう一度理解する必要がある」と危機感をあらわにした。

 その後、藤田弘輝HCが会見で頻繁に使い始めた言葉が「ディフェンスファースト」だ。3日後の滋賀戦では今季最少の52失点で圧勝。体を張った守りで勝利に貢献した牧隼利は「『キングスはディフェンスから試合をつくる』と話して試合に入った。共通認識を再確認できたことが勝利につながった」と選手全員がチームの強みに立ち返ったことを勝因に挙げた。

 半年をかけて全60試合をこなす長いシーズン。どのチームにも精神面やプレーの波は付きものだが、いかに素早く立て直すかが上位を走る鍵になる。キングスはその後、三遠との2連戦で失点を70点台に抑え連勝。攻守でけん引するジャック・クーリーは「苦しく自分たちのスタイルを見失った時期から選手、スタッフ含め全員で再建できた」(1月30日)と修正力の高さを誇った。

鍵は日本人選手

 キングスにとってもう一つのキーポイントは、日本人選手がいかに活躍の幅を広げるかにある。1月31日の三遠戦後、田代はシーズン前半戦を振り返り、チームの現状をこう評した。

 「リバウンドはジャックが取ってくれるし、得点も(ドウェイン・)エバンスが取ってくれるから大きく崩れない。でもそれで僕たちの意識が落ち、波のある試合をしてしまうことが多い。もっと日本人選手がプレーのスタンダードを上げる必要がある」

 大黒柱の2人への依存度を減らすことが、チーム力の向上につながると見る。他チームを含めたリーグ全体の個人ランキングで得点、リバウンド、ブロックのトップ10に日本人(日本国籍取得選手を除く)は1人もいない。身長の優位性が少ないアシストでもトップ3は外国人だ。つまり、日本人の存在感が大きいチームはそれだけ的が絞りづらいということになる。

 守備の強度を高く保つことに加え、攻撃面でも「日本人選手がもっとプレーメークしてゲームをつくっていくべきだと思う」と自他に成長を求める田代。西地区4連覇、そしてチャンピオンシップでの躍進へ。シーズン後半戦、現状に満足せず、一歩ずつ高みへと歩みを進める。