[日曜の風・吉永みち子氏]コロナと五輪 過ち生む 雑な言葉


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 今や日本の最大関心事は新型コロナのワクチン接種とオリンピック・パラリンピック開催。ワクチンは、先進国に偏っていると指摘されているが、世界の約60カ国で接種が始まっているのに、日本はまだゼロ。G7の中で日本だけゼロ。ワクチン担当大臣曰(いわ)く。「高齢者への接種は早くても4月以降」。

 4月以降?あまりに雑な言い方ではないか? 極端に言えば来年だって4月以降になる。製薬会社との約束も合意なのか契約なのか、契約ならその契約内容もはっきりしない。何か全て大雑把(おおざっぱ)な感じである。

 国はオリパラを開催したいから本気出すはずとの予想も、五輪組織委会長・森喜朗氏の発言で本気とは気分で何とかすることだと判明。「何がなんでもやらなくてはならない」「観客の扱いは口が裂けても言えない」「安心安全の基準はあるかといえばない」ともう意味不明。これじゃ8割の日本人が開催は無理だろうと思うのも仕方ないわ。森氏の乱暴な発言は女性蔑視まで加わって国際的な批判を引き起こして何とも恥ずかしい。

 乱暴と言えば、これぞ乱暴の極みとたまげたのは、空港などでの水際対策強化に関して、14日間の待機要請などに違反したら、法律上の根拠がなくても行政法上の合理性があるので氏名国籍を公表するとした加藤勝信官房長官の発言。政府の要人が、法的根拠がなくてもいいと堂々と言っちゃうって法治国家としてどうなんだ?

 日本ってこんな大雑把で詰めが甘く乱暴な国だったけ?と友人に言ったら、「昔からそうだったでしょ」というお答え。え?丁寧で慎重だったような気が…。「それならあんな馬鹿な戦争してないよ。コロナ対策でも同じ事繰り返しているし」とのこと。なるほど。

 そういえば、かつて外国の人から「日本人は小さなことや言われたことは真面目に丁寧に対応するけれど、大きく重要な問題を考えるということに関しては不真面目になるのはなぜか?」と問われた。きっと根気がないか最後のところで空気を読んで流されちゃうせいだ。だから大きな問題に直面すると、同じ過ちを繰り返す。

 繰り返さないためには、それは何? それではいけない!と面倒くさくても雑で乱暴な言葉を詰めていかないとツケがどんどん回ってくる。

(作家)