渡具知名護市長、就任3年 新基地の賛否いまだ示さず 歴代4市長と一線


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 【名護】名護市の渡具知武豊市長が8日で就任から3年を迎えた。米軍普天間飛行場の辺野古移設問題を抱える名護市では、基地建設に対する歴代市長の政治姿勢などが県内外から注目されてきた。渡具知市長の基地建設への姿勢や公約の達成状況、再編交付金の使い方などを検証する。 (岩切美穂)

 米軍普天間飛行場の辺野古移設について渡具知市長は、市長選以来、「容認でも反対でもない」とのスタンスを崩さず、賛否を明確にしていた歴代4市長とは一線を画す。支持者らからは「玉虫色の対応をいつまで続けるのか」と、容認表明を求める声もある。

 辺野古移設を巡っては過去3代の市長が条件付きで受け入れた。1997年、比嘉鉄也氏は受け入れと同時に辞意を表明し、政府は2000年度から10年間で1千億円の北部振興事業を提示した。後継の岸本建男氏は15年の使用期限を付けた7条件を提示。日米両政府が合意した辺野古沿岸部移設には反対した。

 続く島袋吉和氏は沿岸部移設を受け入れ、騒音軽減のため滑走路の修正案を求めた。その後の稲嶺進氏は、基地に頼らないまちづくりを掲げ反対を貫いた。

 渡具知市長は市議時代、容認を公言していた。支持者の70代の男性は「市長選では戦術として争点化を避けたが、あれからもう3年。容認をはっきり打ち出すべきだ」と指摘する。男性によると与党市議の間で容認表明を求める声が複数ある。

 過去3市長が基地受け入れと引き替えに国から振興策を引き出した「条件闘争」を渡具知氏にも期待する支持者からは、「何に力を注いでいるのか見えない」との不満も聞こえる。男性は「リーダーシップを発揮して国の予算を獲得し、北部基幹病院の実現や災害に備えた市庁舎移転を進めてほしい」と望んだ。

 「暮らし優先」の姿勢が支持された渡具知氏の公約進捗(しんちょく)をみると、1年目に保育料・給食費・子ども医療費無償化を実行した。21世紀の森公園と宇茂佐海岸のロングビーチリゾート計画は、名護湾沿岸構想の中で基本計画を策定中。また給食センター整備は検討中など、2年目以降は具体的な成果は見えづらい。

 市議の考えはさまざまだ。「容認を打ち出し、街づくりのビジョンを示してほしい」と語る市議がいる一方で、「容認表明しないのは、外部の圧力などではなく市長自身の考えだ。国と県の係争が決着するまで言及すべきではない」と断言する人も。別の市議は「市長選で公明と政策協定を交わした。容認表明は簡単ではない」と推測した。

 本紙などが4日に行ったインタビューで渡具知氏は「国と県が係争中という状況が変わらない限り、立場は変わらない」と賛否を示さない姿勢を強調した。市長選を1年後に控え、今後どのように市政運営のリーダーシップを取るか、注目が集まる。