エンタメ業界SOS「観光産業にも影響」…長引くコロナ自粛、返済猶予の期限迫る


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感染予防で接触を避けるため、観客にチケットをもぎるよう促すスタッフ=2020年12月、沖縄コンベンションセンター展示棟(PMエージェンシー提供)

 「声援や合唱など大声を出す行為や指笛は、お控えください」。2020年末、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター展示棟で行われた年越しライブでは、このような注意が呼び掛けられた。 (仲村良太)

 イベントを手がけたのは県内業界大手のピーエムエージェンシーで、業界団体のコンサートプロモーターズ協会(ACPC)や県のガイドラインに沿って感染対策を徹底した。来場者には事前に体調を確認する「web問診票」の提出を求め、会場入り口前には検温所を設置、会場は清掃専門業者に消毒を依頼した。費用、時間、人出をかけた結果、会場での感染は確認されなかった。ただ、会場の客席は通常の50%以下。経費はかさむが、収入は減少した。

 同社の城間尚哉さんは「熱心なファンに支えられているが、苦しい。緊急事態宣言後に予定されているコンサートのチケットも売り出しづらい」と語る。

 新型コロナの影響が長引き、多くの集客が見込めない状況が続く。大物アーティストが全国ツアーを控えることで、沖縄公演がなくなることもある。20年に同社が関わったコンサートやイベントは150件ほどだったが、約8割が中止や延期になった。県内各地の祭りや催事も相次いで中止となった。

間隔を空けて座席が配置された年越しライブ=2020年12月、沖縄コンベンションセンター展示棟(PMエージェンシー提供)

 影響は関連する音響会社にも及ぶ。プロサウンドスタックの糸数聡社長は「コロナ関連の特例融資などで急場をしのいだが、返済猶予の1年がたとうとしている。企画しても予想ができない」と先行きを案じた。

 政府の支援策もあるが、損失は大きい。ACPCなどエンターテインメント業界4団体は1月、政府に緊急経済支援や公演キャンセル時の公的補填(ほてん)など対策を講じるよう求めた。

 城間さんは「エンターテインメント産業の衰退は、観光立県沖縄の観光産業に大きく影響を及ぼす。イベント開催に制限がある現状では自助努力のみの経営は困難だ。今後、県や各自治体には、県全体に関わる経済対策として、エンターテインメント業界に対する積極的な支援策を考えてほしい」と訴えた。