米軍機低空飛行 届かぬ沖縄の抗議 県議会は禁止要求 防衛省「低空」認定に慎重


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 県内で相次いで確認されている米軍機の低空飛行訓練を巡り、沖縄と政府の間で認識の隔たりが顕著になっている。岸信夫防衛相は米側が公共の安全に配慮を払うのは当然としつつ「飛行訓練はパイロットの技能向上を図る上で不可欠だ」と一定の理解を示す。一方、自民会派を含む県議会は区域を問わず低空飛行を禁じるよう求める抗議決議を可決する見通しで、双方の溝が深まっている。

 県議会は1月にも低空飛行をやめるよう要求したが、繰り返されたことから1カ月程度の短期間で同様の抗議決議・意見書を出す異例の展開となった。意見書を巡る県議会会派間の文言調整は、飛行制限を求める範囲を巡り「提供区域外で(低空飛行をやめること)」との注釈を入れるかが議論になった。その際、自民党県議らが「提供区域内では(低空飛行を)やってもいいとは言っていない」「低空飛行自体をするな、ということだ」などと口をそろえて異を唱えた。

 県議会米軍基地関係特別委員会の照屋守之委員長(沖縄・自民)は「どこであっても低空飛行はまかりならんというのが県民の要求だ」と強調した。一方、防衛省サイドは「低空飛行」と認めること自体に慎重だ。日米合同委員会合意に基づき米軍にも適用されている最低安全高度は、水上などでは水面から150メートルと規定するが、米軍が飛行は「合意を順守している」と説明しているためだ。

 防衛省関係者は「(米軍がそう)言う以上、守っているはずだ」と話す。だが米軍が運用の細部を明かしておらず、日本として実際に米軍機の動きを追い切れていないため「米軍の主張をうのみにしても、説明になっていない」と地元の懸念に理解を示す向きもある。防衛省は撮影された映像などから飛行高度を割り出す方法の調査を始めた。

 同省高官は、過去に米軍内の人事異動の影響で合意内容が徹底されていなかった事案があったとし「地道に求め続ける必要がある」と話した。