2月第3月曜「大統領の日」 影響力の裏に重圧 歴代半数が疾患抱え<アメリカのつくられ方、そして今>


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 2月の第3月曜日は、アメリカ合衆国の歴代大統領をたたえる祝日。今年で建国245年、歴代の大統領を45代目まで振り返ると、それぞれの時代背景や業績、指導力などによってアメリカをつくってきた経緯が興味深い。

 行政機関の最高責任者、軍の最高司令官である大統領は、核のボタンを押せる権限を持つ。大統領の鶴の一声でこの国がつくられるだけではなく、国外でも影響力は大きい。そのため大統領は資質が問われ、偉大さを備えた人でないと職務は務まらない。その資質はまず品性があり、雄弁かつ指導力に優れていることがあるが、何と言っても強靱(きょうじん)な精神力と頑丈な体力がないと、全うできない職務である。

 1974年、フォード大統領の頃に行われた調査によると、大統領37人中半分近くが精神疾患を抱えていたようだ。4人に1人はうつ病であったという。リンカーンも鬱(うつ)を患い、ケネディーは持病のためステロイドを服用し、その副作用で鬱になった。レーガンも精神的な問題を抱え、最後はアルツハイマーになり、ニクソンはアルコール依存症になった。

 アイゼンハワーは大統領を辞する際に「司令官として大戦中、指揮を執っている時より孤独だった」と語っている。世界恐慌の真っただ中に就任し、国民を鼓舞した人気のルーズベルトは「不屈な精神力を持ってしても、身に迫る苦痛に耐えることができない」と、大統領職の重責と重圧が並大抵のものではないと話した。ルーズベルトの死因は高血圧性脳出血で、死亡時の血圧は最高300、最低190だったという。

 国際連盟の設立に尽力したウィルソンは、心身をすり減らして病に倒れた。性格が温和で「NO」と言えないハーディングは遊説中に心臓発作を起こし、ハリソンは肺炎、テイラーは胃腸炎で亡くなった。

 一方で波乱の人生を送りながらも危機を克服し、たくましい精神力の資質を身につけた一人は、原爆を日本に投下させたトルーマンだ。高校卒業後に軍隊に入り、除隊後は故郷で雑貨店を開くが破綻。多額の借金の返済に追われるワーキングプアだった。それでも努力を惜しまず、逆境に耐える力と謙虚さが培われた。

 クリントンは、日常的に暴力を振るう、アルコール中毒の継父が銃を発砲するなど、劣悪な環境で育った。幼少期の経験から自己の感情を制し、批判に耐える術を身につけた。そしてオバマは、複雑な家庭環境の中で自己のアイデンティティーに苦悩し、マリフアナやドラッグやアルコールに逃避するが、貧しい人たちへの救済活動などを通して、内面の弱さを克服していった。

 現職のバイデン大統領は、山積する問題に積極的に取り組み、執務をこなしている。議員時代2度の動脈瘤(りゅう)破裂で手術を受けたバイデン大統領が、激務に耐えるほどの体力があるか心配だが、政治家としての熟練のキャリアと、幾多の苦難を乗り越えた精神力で、大統領の公務を心身共に健康で全うしてほしいと切に願う。

 (鈴木多美子バージニア通信員)