新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受ける観光業界の中でも、小規模の宿ほど「GoToトラベル」や「沖縄彩発見キャンペーン」の観光促進事業の恩恵が少なく、苦境に陥っている。逆境にありながら新規事業の開拓や、自社開発商品の海外市場への売り込みを模索する、小規模宿泊施設の事業者もいる。
沖縄市で約18年続く古民家民宿「ごーやー荘」。国内客だけでなく、海外から訪れる観光客も大勢いる。新型コロナが猛威を振るった2020年の稼働率は、例年の6割から1割まで大幅減となった。
オーナーの野下秀広さんは「昨年4月以降、新規宿泊客はほとんどいなかった。廃業も考えていたが、国の持続化給付金などがあったから、なんとか踏ん張れた」と振り返った。
経営困難を打開しようと昨年7月、県外リピーター客向けに沖縄食材の購入代行を始めた。自身が運営する会員制交流サイト(SNS)などで購入代行を発信し、これまでタンカンや伊勢エビなども県外向けに送った。昨年7月~2021年2月までの注文件数は計50件に上った。
しかし、1件当たりの利益は2千円弱にとどまり、「割に合わない」という。それでも、野下さんは代行事業を継続する。「リピーター客とのつながりが一番の目的だ。新型コロナが収まったら、また来てもらえるための手段だ」と長期的な狙いを語った。
感染が急拡大した宮古島市でも、コロナ下で奮闘している小規模宿泊事業者がいる。2004年に創業した「がじゅまる観光」は、自社開発のハーブティー「島茶」の海外販売に力を入れている。元々は自社の「ホテルてぃだの郷」の宿泊客や、レストランで昼食を取る中国、台湾人クルーズ客に提供していた。クルーズ客らから好評を博したため、18年の商品化につながったという。
現在、島茶は桑の葉や月桃など4種類があり、九州などに年間約千パックを卸売りしている。今後、輸出も視野に入れ、猪子立子社長は昨年6月に、県貿易協会が主催する貿易関係の研修を受けた。猪子社長は「研修の一環で実施したリモート商談で、香港のバイヤーが島茶に興味を示した」と、海外展開にも手応えを感じている。
現在、ホテル内のレストランで島茶を製造しているが、「工場を立ち上げて商品製造していきたい」と今後の目標を語った。
(呉俐君)