沖縄を「内」と「外」から問い続け、理不尽に立ち向かう 東恩納寛惇賞の比屋根照夫さん 


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インタビューに答える琉球大学名誉教授の比屋根照夫さん=10日、浦添市内

 伊波普猷研究の第一人者で、沖縄のアイデンティティーや主体性を問い続ける琉球大名誉教授の比屋根照夫さん(81)。思想や言論など多岐にわたる研究業績が評価され、第38回東恩納寛惇賞に輝いた。浦添市の自宅で「権力、国家とは無縁の、非常に重みのある賞。とてもありがたい」と笑顔を見せた。

 1939年に名古屋市で生まれた。敗戦後の46年、旧美里村登川に引き揚げ、「語り尽くせないほど」の米兵犯罪を見て育った。59年6月の宮森小米軍ジェット機墜落事故では、琉球大新聞部員として現場を取材し、遺族に話を聞いた。

 「本当にかわいそうだった。こんなひどい仕打ちがあるのか、と思った」。日米両権力に翻弄(ほんろう)され、抑圧された沖縄の人々。「学問を通して、この理不尽をなんとかしたい」と研究者の道に進む。

 東京教育大大学院時代に目をつけたのが、明治の自由民権思想と沖縄の関係だった。さらに、伊波普猷ら近代沖縄知識人の思想を掘り下げていった。「内」と「外」の視点から「沖縄はどうあるべきか」を問い続け、「近代日本と伊波普猷」「戦後沖縄の精神と思想」などの著作を発表。その研究成果はまるで沖縄の「羅針盤」だ。

 自ら「頑固派」と言い、「研究者、言論人は現実から目を背けてはいけない。時代に対して誠実でないと、自身の人生が形骸化、虚無化してしまう」と熱っぽく語る。現在の研究テーマは、アジアと沖縄の関係史。「新型コロナウイルスの影響で外にも出られないよ」と苦笑しつつ、日々、思索を重ねる。