普天間基地内の墓、移転へ 米軍の施設整備の影響か 国が初の補償調査


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 米軍が「運用上の所要」を理由として普天間飛行場(宜野湾市)にある墓の移転を計画していることが、17日までに分かった。沖縄防衛局が墓の所有者に対して移転に伴う補償を行う予定で、2020年7月に民間の調査会社に移転補償費の算定調査を依頼していた。防衛局が移転に伴う補償調査を実施するのは初めて。宜野湾市によると、移転について米軍や防衛局から照会や通知は受けていないという。関係者によると、米軍の施設整備に伴う移転の可能性が高く、期限切れを迎えた「5年以内の運用停止」の約束の形骸化が改めて浮き彫りになった。

 防衛局は墓の移転に伴って20年7月、「普天間飛行場墳墓の移転補償に係る補償物件調査業務」として一般競争入札を実施した。那覇市のコンサルタント会社が198万円で受注し、同7月から11月にかけて調査業務を行った。

 防衛局は、本紙の取材に墓の移転の理由として「米軍の運用上の所要」と説明した。移転予定の墓の数については明らかにしていない。移転に伴う補償調査について「現時点で把握している限り実施した実績はない」としており、所有者がいる墓の移転は同基地で初めてとみられる。

 墓の所有者への説明を終えているとしたが、墓の所在地や規模などについては、「契約前であるため詳細については答えを差し控える」と回答した。米軍は「海兵隊普天間基地の墓移転に関する全ての質問については沖縄防衛局に問い合わせください」と答えた。

宜野湾市の市街地中心部に位置する普天間飛行場=2020年12月

 関係者によると、米軍の施設整備に伴う工事の影響で墓の移転計画が浮上した可能性が高いという。

 宜野湾市は、20年4月からこれまでに、米軍や沖縄防衛局から墓の移転について照会や報告を受けていないとしている。

 沖縄戦中に、米軍が土地を接収して建設された普天間飛行場には、墓が集中する地区が12群現存している。これらは「古墓群」と呼ばれ遺跡として取り扱われているが、過去に移転の事例はないという。

 米軍は毎年春の清明祭の時期に限って基地内に先祖や親族の墓がある市民の立ち入りを認めている。20年は445人が米軍に立ち入りの許可を届け出た。墓の返還を求める市民もいるが、実現した例はない。 

(安里洋輔)

 

 


<用語>米軍普天間飛行場

 宜野湾市の中心部にある米海兵隊基地。約2800メートルの滑走路を持つ。周りに住宅や学校が密集し「世界一危険な米軍基地」とも言われる。1995年に起きた米兵による少女乱暴事件を機に、日米両政府は96年、日本へ返還することで合意。日本政府は99年に名護市辺野古への移設を閣議決定した。2013年、当時の仲井真弘多知事が辺野古沿岸部の埋め立てを承認したが、辺野古移設に反対する後任の故翁長雄志前知事が15年、承認を取り消した。移設の是非を巡り、県と国の法廷闘争が続いている。