消毒液噴射は「拒絶の響き」…必要とわかっていても コロナ自宅療養者の不安と孤独


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家族から離れ自宅療養する女性=1月、浦添市

 壁一枚を隔てて聞こえる消毒液の噴射音。次第に高まるストレス。新型コロナウイルスに感染し、自宅で過ごさざるを得なかった人の中には家族への感染を恐れ、心が休まらない状況が続いた。新型コロナウイルスによる県内の療養者は17日時点で332人。このうち9.3%に当たる31人が自宅療養している。つらかった心境を吐露し、心理的なケアの必要性も訴えた。

 浦添市の女性(40)は家族と4人暮らしだ。1月中旬、同僚の感染が判明し、濃厚接触者となった女性の感染も後に明らかになった。ホテル療養を希望したが、保健所から空きがないと回答を受け、自宅療養となった。

 保健所は、発症から10日間、女性に人との接触を避け、自宅療養をするよう指示したという。同居家族は全員濃厚接触者とされ、自宅で14日間の経過観察となった。その間、女性と家族は、和室のふすまを境に自宅で共に過ごした。トイレや浴室は共用せざるを得ず、家族はその都度、自宅内を消毒した。女性は「必要な措置だと分かっていても、消毒液の噴射音が自分を拒絶している音に聞こえた」と明かした。

 女性を除く家族全員は検査の結果、陰性だった。期間中、子どもたちは学校に登校できなかった。運動不足など不満が募り、別室で療養中の母に強い言葉をぶつけるなど、家庭内には重い空気が漂ったという。

 南部保健所管内に住む50代女性は1月下旬、感染が判明した。感染が発覚して以降、女性は自宅個室で過ごした。トイレは二つあったため、女性と他の家族で分けて使用した。風呂は女性が一番最後に使用した。女性が触ったものは夫が除菌シートで拭いて回った。体調の報告や飲料・食事を要求する場合、スマートフォンのアプリを使い、意思疎通を図った。

 噴射音に拒絶されていると感じたという浦添市の女性は発熱や咳、味覚障害の症状が現れたことを除き、比較的軽症だった。女性は「医療態勢の拡充に合わせ、感染者やその家族、濃厚接触者などの心のケアも重要だ」と訴えた。