【識者談話】中国にらみ訓練激化、住民不安招いては運用できぬ(沖国大准教授・野添文彬氏)


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野添文彬氏

 米軍が注視しているのは中国にどう対抗していくかだ。米軍と中国軍との想定される戦場は海洋となる。以前から実施していたという米軍機の低空飛行訓練が激しくなっているのは、米国が中国をにらんで太平洋の島々を重視する作戦を取っているからだと考えられる。

 低空飛行訓練を続ける米空軍MC130J機は特殊部隊を運ぶ機体だ。南西諸島の島々の地形を探ったり、部隊や物資の輸送で接近したりする訓練を連日実施している可能性がある。

 中国は南西諸島から台湾、フィリピンにかけての海洋を(軍事的防衛ラインの)第一列島線と設定している。ここが米中の対立の最前線だ。このラインに近い沖縄を巡る島々で紛争が起きる可能性はある。バイデン政権でも対中強硬姿勢は続くと言われている。激しい訓練は続くとみられるが、住民に不安を与えており、大きな問題がある。

 住民生活に影響が出るような訓練ができるのは、日米地位協定で訓練を規制する取り決めがないからだ。県が実効性のある対応を取ることは難しい。米軍が住民の不安をあおるような訓練を続けては、米軍基地の安定的な運用はできないと、県は日本政府と米軍に言い続けないといけない。