「金しかない」折れぬ心で長打力磨く 環境一新「まずは代表入り」 ソフトボール・州鎌夏子<憧憬の舞台へ>


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打撃練習に汗を流す洲鎌夏子=12月16日、読谷村座喜味の平和の森球場

 女子ソフトボールの代表チームに求められる打撃力の追求を続ける洲鎌夏子(知念高―環太平洋大出、デンソー)は、チーム移籍で環境を一新し、固い決意で入念に準備を進める。視線の先にあるのは東京五輪の金メダルだけだ。「まずは代表入り」と強化選手20人から代表15人に絞られる選考レースの突破を図る。関わってきた人たちへ「恩返し」するためにも、ソフトボール人生を懸けて五輪に挑む。 (謝花史哲)

 昨年初めからノーステップを試すなど長打者を目指してフォームの改造に取り組んできた。手応えを得たのは昨季の1部リーグ決勝トーナメントだ。所属した豊田自動織機―デンソーの1回戦。2点を追い掛ける4回裏に打順が先頭で回ってきた。1球目の外角を見送り1ストライクから2球目を振り抜いた。打球は左中間スタンドに。この回、逆転につながる口火を切って勝利に貢献した。

 決して万全の状態ではなかった。コロナ禍で後半戦しかなかった昨季。開幕1カ月前の8月上旬に腰を痛めた。自粛期間中、理想のフォーム習得のため「オーバーワークしてしまった」。リーグ戦は出場する機会が減り、いろいろ確かめたかったことができなかった。

 それだけに決勝トーナメントの結果は前向きになれる一打だった。相手は120キロ近い球速を誇るカーリー・フーバー。洲鎌は「外国人投手を相手に変化球や直球など対応していく課題を持ち続け、数少ない後半戦で打てたのは自信になった。やってきたことは間違いじゃなかった」とうなずいた。

 東京五輪の延期が決まり「もう1年やるのか」といろいろ考えた時もあったが、「レベルアップの期間が長くなった」とプラスに切り替えることができた。そう思えたのも周囲の励ましがあったからだ。現在31歳。28歳で引退が頭をよぎったが、五輪の母国開催が決まった。支援してくれた人たちの思いも背負い、最終目標としてやり抜く覚悟は1年延期で折れることはなかった。

 自らを見つめ直す機会を求め、今季デンソーに移籍した。時同じく日本代表で主将を務める山田恵里も日立から加入。環境を変えたことがいい刺激になっているという。

 昨年12月の代表合宿を過ごし「チームは楽しくソフトボールをしている。雰囲気はいい感じだ」とチームの状態を振り返る。「上と下の世代のいいつなぎ役になれたらと思う。チームの目標は金メダルしかない。最大の準備をして向かうだけだ」と力強い。有言実行へ勝利につなげる打撃を誓う。