140億円市場コロナ直撃 沖縄県内結婚披露宴 相次ぐ中止・延期


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大型のアクリル板を紹介するロワジール・ホテルズ沖縄の知念秀展さん。見送り時の写真撮影で密にならないようにと設置した=19日、那覇市西のロワジールホテル那覇

 新型コロナウイルス感染症の流行が始まって以来、結婚披露宴はほぼ中止や延期が続いている。ブライダル業界の事業者は、雇用調整助成金や融資で経営を維持してきたが、1年を超えるコロナ禍で廃業や撤退が出始めている。関係者は「自分の周りでも5社は廃業している」と話す。これまでは披露宴を延期して開催方法を模索していたカップルが多かったが、第3波が来てからは計画を白紙にする事例が目立つという。(中村優希、石井恵理菜)

 「今は(結婚式の開催が)厳しいのは分かっている。何とか収束後に向けて希望がほしい」。ウエディング関係の企画などを手掛けるオフィスパーティーズの廣田剛社長(沖縄ローカルウェディング協会代表理事)らは19日、玉城デニー知事にブライダル業界への支援を要請した。

 ■経済波及

 200~300人規模を集める披露宴が珍しくない沖縄では、1件当たりの経済効果が大きい。沖縄ローカルウェディング協会によると、県内の挙式件数は年間3千~4千件で、結婚式や披露宴だけで年140億円以上の経済効果があると言われる。さらに参加者の交通費や美容院代、余興準備など関連する消費にかかる波及効果も100億円以上はあるという。

 イベント用の衣装貸し出しをする那覇市内のあるサロンでは客の6割が結婚式関係だ。昨年2月ごろから利用客が減り、結婚式関連は月に1件あれば良い方だという。

 参加者を親族だけに絞るなど、規模を縮小して開催するカップルもいる。ただ、大人数で新郎新婦を祝う沖縄ならではの披露宴文化が、コロナの影響でなくなることを危惧する関係者も少なくない。

 千代田ブライダルハウスの元田徹代表は「沖縄の披露宴は伝統芸能などの文化を育み、発表する場所にもなっている。元のスタイルに戻ることを県や市町村にはぜひ後押ししてほしい」と求めた。

 ■開催方法を模索

 苦境の中、各事業者は感染防止対策に力を入れながら、披露宴を開催していく方法も模索している。

 ロワジールホテル那覇では昨年9月の披露宴で、密防止のため新郎新婦による参列者の見送りをなしにした。それでも、新郎新婦と写真撮影をしようという出待ちなどで、会場の外で参加者が密になってしまう場面があった。

 このため、新郎新婦と参列者の間を高さ1・8メートル、幅2メートルの透明アクリル板で隔てた上で、見送りや写真撮影を行うことにした。アクリル板の枠を木で囲むことで、暖かみが伝わるよう工夫した。

 ロワジール・ホテルズ沖縄のブライダルグループ担当支配人の知念秀展氏は「さまざまな事情で、コロナ禍でも披露宴を挙げたい人もいる。新郎新婦に寄り添えるような対策をいつでも用意している」と話した。