「不安はない」狙うのは代表入り 空白期間に下半身の筋力強化 重量挙げ・神谷歩<憧憬の舞台へ>


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世界選手権女子76キロ級 ジャークの118キロに成功した神谷歩=2019年9月24日、タイ・パタヤ

 重量挙げの女子76キロ級で、国内無敵を誇る神谷歩(28)=豊見城高―金沢学院大出、同大職。コロナ禍で1年以上にわたり実戦から離れているが、空白の期間を利用して「ずっと課題にしていた」という下半身の強化に注力してきた。マイペースでトレーニングを積み、痛めていた股関節の状態も改善傾向にある。次戦は東京五輪の代表選考が懸かる最後の大会となる4月のアジア選手権。「自己新を取りたい」。ため込んだパワーを、大一番で爆発させる。

 勤務先から競技専念が認められており、練習拠点のある和歌山で暮らす。大学時代の先輩で、12年ロンドン五輪75キロ超級で8位入賞した嶋本麻美の母校・和歌山東高で今も嶋本と共に鍛錬を積む。昨春の政府による緊急事態宣言で学校が休校になり、利用していた県管理の練習場も使用できなくなったが、嶋本の恩師の自宅ガレージに機材を持ち込んでトレーニングを重ねた。通院する治療院からも筋トレ道具を借りるなど、工夫を凝らした。

 現在の自己ベストはスナッチ107キロ、ジャーク123キロ。2015~18年に全日本選手権4連覇を果たし、国内では敵なしだが、19年の世界選手権は股関節のけがの影響もあり12位。世界のトップと渡り合うためには「トータル240キロ以上が必要」と見る。東京五輪の代表枠は全7階級から最大で四つ。世界ランキングを上げることは、選考にも有利に働く。

 記録を伸ばすため、特に強化したのはお尻の大殿筋など下半身の筋力だ。「これまでしっかり使えていなくて、パワーも不足していた。時間もあったので、今しかないと思った」とデッドリフトやスクワットを地道に繰り返した。土台を鍛え、筋力を活用できるフォームを模索することで、安定感向上を見据える。

 もう一つ取り組んだのがバランスの改善だ。「重心の位置が悪いから、負担がかかって股関節を痛めてしまった」と、左右の足への理想的な力の入れ具合を探究。大会がないため日程を詰めずに練習したことも奏功し「痛みで練習ができないことはなくなった」と症状も好転している。

 一方、五輪はコロナ禍で開催自体が不透明な状況が続き、組織委員会の会長交代という迷走も起きた。開催可否や大会の意義について「このままいくと不安」というのも本音だ。開催されれば「見ている人を含め、みんなに還元される大会であってほしい」との思いを強くしている。

 2月の東アジア選手権が延期となり、3月のコロンビアでの国際大会も帰国後の隔離を憂慮して辞退。実戦からは19年9月の世界選手権以来遠ざかっているが「やってきたことがあるから不安はない」と心強い。「本命」と位置付ける4月のアジア選手権は近い。「今まで通り下半身を鍛え、瞬発力も上げていく」。自信を積み重ね、プラットホームに向かう。

 (長嶺真輝)