新型コロナの重症化リスク浮き彫り 高齢者施設で9人死亡 人工呼吸器使えず


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 沖縄県宮古島市の高齢者施設では、19日に発表された6人に加え、3人がすでに病院で亡くなっており、計9人の利用者が死亡した。県内で新型コロナウイルス感染症のクラスター(感染者集団)が起きた施設としては、過去最多の死者数となる。高齢者は重症化しやすく、新型コロナの感染が命に関わることが改めて浮き彫りとなった。 

 宮古島市では1月、新型コロナの感染が急速に拡大した。市中での流行から高齢者施設にも感染が広がった。市内で唯一の感染症指定病院の県立宮古病院は連日、新型コロナ患者を受け入れ、病床が逼迫(ひっぱく)した。クラスターが起きた高齢者施設では、病院への転院が難しい状況に陥ったという。

 同施設には、自衛隊の医療支援チームや宮古病院の医師が派遣され、診療に当たった。県内外から看護師がローテーションを組んで入り、高齢の感染者らは投薬治療や酸素投与など、病院と同等の治療を受けられていたという。

 施設内で亡くなった6人は、治療で人工呼吸器を使用していなかった。人工呼吸器はのどに管を入れた状態になり、鎮静薬も用いられるが本人にとってつらい治療となる。県の糸数公保健衛生統括監は「高齢者の場合、人工呼吸器を使う選択ができないことも多い」と説明する。本人と家族の意向を尊重し、人工呼吸器を使用しないこともあるという。

 宮古地区医師会の岸本邦弘副会長は「新型コロナは高齢者が重症化するリスクが高い。弱者にこそ被害が出るということが現実として示された」と声を落とした。クラスターが起きたことについて「福祉施設は介護時に、利用者と職員の密着度が高くなる。集団感染になりやすい条件はそろっている」と指摘した。

 宮古島では月末に、親族が集まり先祖供養をする旧十六日が控えている。岸本副会長は「消毒とマスク着用はしっかりする。(行事は)短時間で終わらせる。これだけは守ってほしい」と求めた。