【識者談話】男女の配置固定化…意識より仕組みを変える必要 (玉城尚美氏・お茶の水女子大院研究生)


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玉城尚美氏(お茶の水女子大大学院研究生)

 行政内で男女の職員配置が、ある程度固定化されているのは、いわゆる「男は仕事、女は家事・育児」との慣習に基づいた「性別役割分業」で人事配置が決まっていることを表している。職員個々の能力や可能性よりも、男か女かという分かりやすい特性「ジェンダー」で配置が決まっているのが実態だ。男女の固定化されたジェンダー意識が、偏った職員配置の根底にある。

 行政内では長年、いわゆる子育てと介護を含めた「妻・嫁」の役割と結び付け、介護や児童福祉を担う「福祉医療」部門に女性を多く配置してきた。一方、行政部門の心臓、頭脳と称される「総務企画」部門には、男性が多く配置されている。この傾向は管理職級でも同様だ。

 管理職級の性差に関しては、一昔前はその街に住む市民でないと採用試験を受けられなかった。沖縄では位牌を継承する長男が地元に残り、役所を受験してきた。それに加え、日本的雇用制度の特徴である「長時間労働」「年功序列」「終身雇用」など文化的社会的なジェンダーをベースとして制度が形成されてきた。これらを背景として、公務員でも男性が多く採用されてきた。

 私は約30年、市役所職員として働いた経験がある。例えば介護休暇を取ることについては、女性は取得するに当たって精神的ハードルは低いが、男性は上司から「姉や妹はいないのか」などと聞かれ、取得しづらい実態がある。

 これは男性上司が育児や介護休業を取得したことがなく、性別役割分業の意識が強いからだ。日本の男性は常に家庭よりも仕事を優先する仕組みの中で生きることを強いられてきた。一方、女性は稼ぎ頭の男性を支える役割を求められてきた。

 これからは男性の意識よりも仕組みを変える必要がある。自分の中に無意識の偏見があると理解するのは当然のことだが、それだけでは十分ではない。首長や政治家が制度を変えるべく、行動に移さないといけない。

(ジェンダー論)