有事の避難計画を支援 政府が「ひな型」作成へ 自治体で研修開催方針


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【東京】住民避難が必要な有事の事態に備えて市町村が国民保護法に基づき作成する避難計画に関し、政府関係省庁はひな型づくりの支援に乗り出す。国政与党幹部に「関係省庁一丸で取り組む」と伝達し、昨年から協議を始めている。先島諸島では自衛隊配備が進み、軍事拠点化が進められる一方、住民の命をどう守るかが見えないと指摘されていた。避難計画を作成する一方で、有事に至るような地域内の緊張を高めない取り組みも求められる。

 避難計画のひな型は「避難実施要領のパターン」と呼ばれる。関係者によると関係省庁の会議は内閣官房が中心となり、消防庁や、防衛省なども参加している。

 具体的な支援の絞り込みはこれからだが、消防庁は各都道府県で3年に1度開くひな型作成の研修会を、沖縄では前年から3年連続で開く方針を決めた。

 特に島しょ地域では、有事にまとまった人数を運べる移動手段が確保できない懸念もある。与党内からは、防衛省が導入を決めた「海上輸送部隊」の船舶4隻の使用を推す声がある。防衛省は「輸送力は持っており、船に逃げてもらうことは可能だ」としつつも「我々の一番の任務は武力攻撃の排除だ」と対応に限界があることを指摘。「国のあらゆる機関が協力する必要がある」とした。

 国民保護法で県知事が避難を指示した際、市町村は直ちに実施要領を定めて避難誘導する必要がある。

 このため、複数の事態を想定したひな型を事前に策定するよう求めている。だが、消防庁によると昨年3月時点でひな型を策定しているのは県内41市町村中4自治体(9・7%)にとどまる。全国では1741市町村中61・8%が策定済みとなっている。

 自衛隊は米軍などと共同で島に敵が上陸したことを想定した奪還訓練を度々実施している。だが、敵が上陸した際に住民をどう避難させるのかが見えないとの指摘がある。一方で「有事は民間の船や航空機の運航が止まる」(政府関係者)ことが想定される。緊張が高まった中での安全な避難策は見通せない。

 関係省庁による会議をまとめる内閣官房の担当者は「離島住民の避難に際して、輸送手段が大きな制約になるのは間違いない。沖縄固有の事情の一つとして、移送手段も俎上(そじょう)に載せて議論していく」と話した。